Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

楽しいことから辛いこと、ちょっとエッチなことまで、正直に語る「孫の力」。

孫の力

淺賀 佐和子

「私の愛読誌!」というのとは正直ちょっと違うのですが、最近「これはなかなかヤルな」と評価している雑誌が「孫の力」です。ニュースではさんざん”高齢化社会”と騒がれ、高齢者向けビジネスや、高齢者向けサービス、高齢者向け詐欺など、高齢者をターゲットによくも悪くもさまざまアクティビティがシフトしています。ですが、雑誌の世界において、いまいちその高齢者の“本当の姿”を映すものがないように思っていました。どこの雑誌も年齢詐称レベルで映し出す若々しい読者がズラリ。歳なんてみんなに平等におとずれるのに、それを拒否するかのごとく、美魔女やその男版が一流ファッションに身を包みポージングしています。読み物ページにいたっては、高齢者たちが本当にほしい、そして誰かに聞くにも聞けない、誌面でこそコッソリ教えてほしい情報が省かれていて、そこには「うちの読者に老いは関係ないから」という勝手な理解と強がり、つくり手の若者たちの「私がやるからにはキレイな雑誌じゃないと」というエゴが感じられて、共感できなかったのです。

そこで「孫の力」の登場です。ここに登場する高齢者像はとても正直です。読者の中には美魔女や美老人なんかいなくて、見事に年寄りです!(笑) 健康面や経済面や将来への不安もたくさん。けれどもそれらを隠したり、恥じたりせず、堂々と誌面上で深堀していきます。「そんなの当たり前じゃん。オレたち高齢者だもん」という堂々とした誌面づくりは、もし自分が読者層であれば、間違いなくそこに共感を見出しています。変な年寄りコンプレックスを吹き飛ばした素顔の高齢者たち。「自分の年齢や存在は恥ずべきものではないのだ。誰もが通る道なんだから!」と胸をはって仲間を探し、悩みや問題を語り合い、「オレたち年寄りだからな~」と最後には笑う姿には、敬意が湧くとともに、幸福感すら感じます。

そのいい例が最新号でしょう。何と特集は「超犯罪社会を生きる」。自分は気をつけているから大丈夫、という人ほど引っかかる“オレオレ詐欺”を心理学で分析することから始まり、高齢者を狙うシニアひったくりから結婚詐欺はもちろん、ちょっと気になるけど「若者のことだから~、でも知りたい~、でも聞ける人がいない~」という危険ドラッグ問題まで、最新情報をアップデートしながらあらゆる事件をくまなく詳しく紹介しています。当事者はもちろん、家族からも「お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、コレ、読んで!!」と言いたくなるほどの充実の内容で、「読んだら、こっちにまわして!」と言いたくなるほど、世代を超えて読者を引きつける情報力と魅力が詰まっています。

高齢者といっても、人によってはまだまだ元気。冗談だってガンガン飛ばせるし、欲だってあるし、実際、性欲だって……。「孫の力」はそんなところにも正直です。毎号巻頭を飾る「GOLDEN 60 DAYS CALENDER」では、今日はこんなことをやれば?という提案が、編集部から衣食住さまざまな角度で提案されているのですが、その中には「私も一緒にやりたい!」と思うようなネタがザクザクあります。最高なのは「女優と妄想」という連載グラビアです。ときには姉に、ときにはインターンに、憧れの旬の女優たちになってもらい、その女優との1日をグラビアにおさめるのです。写真を見るだけで、「ムフッ」となってしまうこと、間違いないでしょう。

「オレたち老人だから!」と言って笑えるうちは、まだまだ若い。そんな気持ちにさせて、人生の晩年も悪くないな、と思わせるのが「孫の力」という雑誌の魅力なのだと思います。
孫の力

「ムフッ」としてしまう、憧れの若い女優との妄想の1日をグラビア化した連載「女優と妄想」。(表紙・誌面写真:青野豊)

孫の力
トド・プレス
奇数月25日発売
¥905
2011年創刊
編集長:小黒 一三