Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

いまだにバックナンバーが捨てられない、まさしく機材オタク必読のバイブルです。

サウンド&レコーディング・マガジン

近藤 智之

編集者になったこともあって、当然昔から雑誌は大好きでした。小学校4年生のある夏、町の図書館にあった「ミスターハイファッション」や「メンズノンノ」に「メンズクラブ」。いまでは惜しくも廃刊となってしまった雑誌もあるけれど、幼き日にそんな素晴らしい雑誌に出合えたことは、僕にとって大きな体験だったのかもしれません。その後、中学~高校と順調にファッション誌から音楽誌、カルチャー誌をガシガシ買い集め、20歳の頃にたどりついたのが、この「サウンド&レコーディング・マガジン」(通称”サンレコ”)という雑誌。

そもそもが「ロッキンオン」や「クロスビート」などとは違い、音楽レコーディング専門誌のため、おそらくほとんどの人は知らないであろうマニア向けの構成です。読者は、一部にプロミュージシャンや音楽エンジニアもいますが、大多数はその道を究めようとする、音楽に夢を見る人々。もちろん、大学時代の僕もそんな輩のひとりでした。そのため、当時の僕のサンレコ愛は熱烈。毎月サンレコで取り上げられる、ミュージシャンの自宅スタジオや使用機材、録音の裏技は何度も何度も読み返しました。部屋だって、掲載ミュージシャンの自宅スタジオを真似したり、エフェクターラックなどを買っては、“いかにも”な自宅作業部屋を目指しました。そのため大学を卒業する頃には、自宅がコックピットのような風貌になっていたのが、いまでも懐かしく思い出されます(笑)。

特にこの雑誌が素晴らしいのは、かなり玄人向けのミュージシャンを大胆に特集記事に取り上げる点です。これまで印象的だったのは、シカゴ音響派のジョン・マッケンタイアや、シューゲーザーの雄、マイ・ブラッディ・バレンタインなどの特集です。音楽不況、雑誌不況と叫ばれるなかで、常にぶれることなく、ミュージシャンが憧れるミュージシャンたちの裏側を紹介し続けている姿勢は、いつも驚きと感動を与えてくれます。さて、その最新号ですが、特集は小室哲哉率いる「TM NETWORK」をフォーカス。シンセサイザー先生だけあって、小室さんの録音話は大変興味深い内容となっています。今回はソフトシンセを大胆に使ったようで、これまでにない制作方法にチャレンジ。そのためますます新曲が気になるところです。またTM NETWORKデビュー当時からエンジニアリングを務める、伊東俊郎さんが語るTMの制作の歴史も面白い内容です。過去をひも解くことで、最新作への興味がぐっと湧く内容となっています。

いまでは毎号は読まなくなりましたが、ジェイムス・ブレイクやシガーロスなど、旬のアーティストをカバーにしていると、ついつい本屋で手にとってしまいます。個人的にサンレコで読んでみたいと思う企画は、「敏腕エンジニアが分析する、90sニルヴァーナサウンドとは?」「ベックが教える、独自サンプリング術」「ケビン・シールズが語るハードシンセとソフトシンセの選び方とこれからの未来」など、です。ぜひともそんな企画の実現が実現するといいなーと思います。サンレコ編集部さん、いかがですか?
サウンド&レコーディング・マガジン

特集の中で公開されている、TM NETWORKの新作「QUIT30」の使用トラックの一部。リズムからシンセ、ボーカル、コーラスなど、音楽編集ソフトPro Toolsでの合計トラック数は250にも及ぶとか。普段は決して知ることができない、制作秘話や使用機材、トラックの公開がサンレコの魅力のひとつです。(表紙・誌面写真:青野豊)

サウンド&レコーディング・マガジン
リットーミュージック
毎月1日発売
¥1,000
1981年創刊
編集長:國崎 晋