建て終えてから、
住まいのもつ
物語は始まる。

サポーズデザインオフィスの家は「無駄」を楽しんでほしいと谷尻さんは言います。無駄、つまり余白が住まいに大らかさを生む。機能性にとらわれ、余白をつぶすと家の可能性が失われるのではないかと危惧します。
「住宅は建て終わったところからできていく場所なんです。僕たちはいまつくっておくべき場をしっかりつくるだけでいい。成長する家をつくりたいんです」
谷尻さんと吉田さんはいま考えている以上のものをつくるために、気づきを続けること、知ることに貪欲であることを大切にしたいと言います。そのために事務所に食堂をつくり、不動産会社を始めました。「自分たちに飽きたくないんです」と吉田さんは言います。
「いまやファッション誌まで、私たちの建築を取り上げてくれるようになりました。枠組みを外していくことでもっと自由な家をつくっていけるように思います」
「僕たちはもともとアカデミックじゃなくて、雑草のような建築家。わかりやすく、そしてオープンに。サポーズというチームで普遍性と多様性を兼ね備えた空間をつくり続けたい。家も僕たちも、年を重ねてなお魅力的でありたいんです」

上:吹き抜けが気持ちいい、広く取られた玄関。ここも作業場のひとつとして考えられています。右手は収納を兼ねた階段。
中:2階は大きなホールに面してガラスの引き戸で仕切ることのできる子ども室が続きます。まだ子どもたちが幼いため、棚とベッドを置く程度。オープンな環境で、カスタム可能な室内はまだまだこれから変化をしていきそうです。
下:右手が玄関。左手の大きな開口部から庭にアクセスできます。最近は玄関ではなく庭から直接やってくる人も多いとか。

家族構成:夫婦、子ども4人 構造・規模:木造2階建 
敷地面積:226.85㎡ 建築面積:118.40㎡
延床面積:168.67㎡(1階117.72㎡、2階51.15㎡)