クライアントとともに、
建築に限らない豊かな場を
いかにしてつくり出すか。
週末になるとBさんは大きな窓を開け、音楽とともに潮騒や潮風を楽しんでいると言います。
「友人のボートで海から家を眺めても、まったく室内が見えません。プライバシーがしっかり確保されていることにも驚きました。実は最初に依頼した際にメンテナンス不要の家がいいと伝えると、穏やかな谷尻さんが海に面したこの土地では無理だとはっきり言う。こうしてこちらもメンテナンスがどういうことかを学んでいくわけです。最初は大人しい印象だった谷尻さんですが、やはりそんなことのない強い目をもった人。いまはその人となりに興味が湧いています」
夏の花火大会には事務所のスタッフとともに谷尻さんと吉田さんもこの家に遊びにやってくる。壁の角度を何度も検証し、港で打ち上がる花火もしっかりと楽しめるようにしたと谷尻さんは言います。
「クライアントの思想、人生観、趣味や価値観。こうしたものがないまぜになって僕たちは住宅を設計しています。建築単体だけで語られると、建築家という作家像に置き換えられてしまう。けれど実際にはクライアントと共犯関係にある作品として見てもらいたいんです」
上:エントランスを入り左手の棟はゲストルーム。友人たちはもちろん、サポーズデザインオフィスのメンバーが宿泊することも。
中:エントランスを入ると両端に木張りの壁が立ち、正面はガラス張りに。海へと続く一本の道が、家を訪れたゲストをロマンティックに迎えます。
下:Bさん自らが以前から気になっていた造園家の橋本善次郎さんに作庭をお願いした庭。
家族構成:夫婦 構造・規模:木造一部鉄骨造2階建
敷地面積:407.77㎡ 建築面積:109.66㎡
延床面積:122.83㎡(1階99.73㎡、2階25.10㎡)