眺めれば、そこに月がある。いまこそ欲しい、ムーンフェイズの腕時計。

写真:宇田川淳 文:笠木恵司 協力:遠藤和呼

時計の表示機能は様々にありますが、カレンダー(暦)の原点ともいえるのがムーンフェイズです。時間は太陽の動きから生まれ、暦は月の満ち欠けを読むことでつくられました。新月から満月を経て再び新月に戻るまでの1周期が1か月の始まりといわれています。ムーンフェイズは、この周期つまり月齢の経過を月相(月の形)の変化で表示する機構です。2つの半円を寝かせたような独特の形状をもつ小窓の左側から月が顔を出して上弦となり、満月を経て、やがて右側に隠れていくのが一般的なスタイルで、この満ち欠けが一巡する周期(朔望月)を29.5日としています。ところが実際の月の動きは複雑で、厳密な平均値は29.530589日と44分程度の端数があります。このため、複数の歯車を追加することで歯数を増やすなど、より高い精度を追求したモデルもあります。
月の満ち欠けは潮汐に関係するほか、人体などにも影響を及ぼすといわれますが、ムーンフェイズは高級時計ならではの伝統的な表示機構であり、モデルによってディスクの装飾などもかなり異なります。それを愛でながら「今夜は満月だね」などとロマンティックに語ることが、太陽暦の現代における楽しみ方ではないでしょうか。