そもそも「グッドデザイン賞」とは?
デザインイベントが目白押しの秋、毎年恒例の「グッドデザイン賞」もクライマックスを迎えています。今年の受賞作を知る前に、まずはグッドデザイン賞の歴史や選考方法など、基本をおさらいしましょう。
いつ、どのように始まったのか?
今年で60年目を迎えるグッドデザイン賞は、日本を代表する総合的なデザインアワードです。その名の通り普遍的な「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じて、私たちの暮らしや産業、そして社会全体をより豊かなものへと導くことを目的としています。
そもそもこのグッドデザイン賞は1957年、国内のデザイン盗用問題をきっかけに、通商産業省(現・経済産業省)が「グッドデザイン商品選定制度」(通称Gマーク制度)としてスタートしました。当初は第3者により推薦されたデザインの中から選ばれていたのですが、その後つくり手やデザイナー自らが応募し、審査委員が選定する制度に移行していきました。
その後、1974年に通商産業省からグッドデザイン商品選定制度の業務委託を受けて以来、公益財団法人日本デザイン振興会が賞の応募・審査・受賞対象の発表から表彰まで、主催・運営を担っています。
誰が、どのように選んでいるのか?
応募総数が毎年数千点にも及ぶグッドデザイン賞は、約80名もの審査委員によって書類審査の1次審査と、実物を確かめつつ応募者のプレゼンテーションを聴く「対話型」と呼ばれる2次審査を経て選ばれています(対話型は任意で実施)。応募デザインはプロダクトや建築だけでなく、医療、モビリティ、情報産業、社会的な取組み、と年々多様化しています。それに応じて審査委員として選ばれる方々もデザイナーや建築家だけでなく、専門分野のジャーナリストや研究者、キュレーターや実業家など、多彩な顔ぶれです。
毎年、応募デザインを14〜15程度のジャンルに分け、担当審査委員がグループで審査にあたります。グッドデザイン・ベスト100や金賞などの選定は、審査委員長と副委員長、そしてグループのリーダーとなった審査委員らが長時間のディスカッションを経て選定するのが恒例です。また、2年前から社会全体で共有すべきいくつかの問題点を横軸として掲げて議論するために、「フォーカス・イシュー」という制度が始まりました。デザインの社会的な意義を問う姿勢がより強まったと言えるでしょう。
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審査委員長と副委員長を務める永井一史さんと柴田文江さん。フォーカス・イシューを導入し、イベントを積極的に行うなど、いまのグッドデザインを多くの人と考える仕組みをつくっている。
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毎年さまざまな分野から、多彩な顔ぶれの審査委員が就任するグッドデザイン賞。約80名ものメンバーが4月から10月まで約半年で、それぞれのデザインについてディスカッションを重ねる。
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広大な東京ビッグサイトホール内の2次審査会場。デザインやプレゼンテーション資料を見て判断するだけでなく、審査委員が応募者の説明を聴く「対話型」審査も含めて3日間で行われる。
選ばれた“グッドデザイン”は、どこで見られるのか?
グッドデザイン賞の発表に合わせ、私たちの生活に身近なグッドデザインを知るイベントが都内各所で開催されます。まず冒頭で紹介した東京・六本木の東京ミッドタウンで開催される「GOOD DESIGN EXHIBITION」では、グッドデザイン賞を受賞したすべてのデザインを見ることができます(一部資料展示)。また、大賞発表までの期間、2015年にオープンした東京・丸の内の「GOOD DESIGN Marunouchi」にて大賞候補が展示されます。大賞はこの展示への一般来場者の投票も得票としてカウントされるので、グッドデザイン賞に参加できる貴重な機会をお見逃しなく。
そして今年、同じく東京・丸の内のKITTE 丸の内にオープンした、歴代のグッドデザイン受賞デザインに特化したセレクトショップ「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」では、受賞デザインの一部が販売される予定です。見て、手に取って、使ってグッドデザイン賞を体感してみてはいかがでしょうか。
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昨年の受賞展会場エントランス。今年も東京・ミッドタウンに受賞デザインすべてが並ぶ予定。会場構成はトラフ建築設計事務所。グラフィックデザインは中村至男さん。
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受賞デザイン発表から約1ヶ月、GOOD DESIGN Marunouchiでは大賞候補が展示される。来場者も大賞に投票可能なので、最新のデザインについて考えるきっかけにしてみては。10月28日まで。
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ジャスパー・モリソンがインテリアデザインを手がけたKITTE丸の内の「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」。買い物しながら、「このプロダクトもGマーク!」という発見を楽しもう。