「トラベラーズノート」の英国デザイナー版特別セットで慈しむ、散歩と手帳のある暮らし
1980年代に海外製品が輸入され一大ブームを巻き起こしたシステム手帳は、人々を新しい生活に導く革新的なツールだった。個人が好きなようにリフィルを足して組み上げるこのツールは持ち歩く机であり、もうひとつの頭脳でもあった。モニタで読む電子書籍がポピュラーになった現代でも紙の本を好む人がいるように、書き入れたときの感情をも内包するアナログ手帳は、単に記録する役割以上の価値を持つ。スマホでは置き換えられない心の拠りどころがある。
パソコンが急速に家庭に広まった時期の2006年に誕生した日本の「トラベラーズノート」は、名の通り旅に出たくなる軽快なシステム手帳である。金属のバインダーがつかない一枚革のノートカバーと、ゴム紐で留めるノートによるシンプルな構成。くったりと使い込むのもOKなデイリーツールだ。立派なシステム手帳が主に仕事で使う“フォーマル” なのに対し、トラベラーズノートはプライベートに適した “カジュアル” 。現在までバリエーションが増え続けるレフィルでは紙の種類だけでも、洗濯で破けない耐洗紙、水彩画を描きやすい紙、万年筆で書いて裏抜けしにくい超軽量紙といった特殊なものも揃える。パーソナルな用途に対応する姿勢が、いまも多くのファンを持つ理由のひとつだろう。
同製品の系譜にこのたび、英国のファッションデザイナーによるユニークなアイテムが加わった。彼の名はナイジェル・ケーボン。同名ブランドで日本でも路面店をはじめ、商業施設にも多数の店を構える人気デザイナーだ。ミリタリーやワークのビンテージコレクターとしても名高いケーボンの作風はアウドドアフィールド。歴史的な登山服や英国伝統のタフな素材をソースにして、流行に左右されないプロダクトをつくる。トラベラーズノートとのコラボ「ナイジェル・ケーボン x トラベラーズカンパニー」ではノートカバー、ノート、ボールペン、ペンホルダー、ステッカーといった基本ラインアップを手掛けた。あたかも軍人の装備品のような佇まいが男心をくすぐる。すべてを収めたセットのほか、各単品でも購入可能だ。
行動の自由が制限され、近所や公園に出かける散歩で冒険したい現在、新しいトラベラーズノートは日常の旅における格好のお供になりそうだ。道で出会った花を撮影したポラロイド写真をノートに貼り付けたり、おいしいランチを色鉛筆でスケッチして食日記をつけるのも楽しい。ニューノーマルな生活には、原点回帰のアナログ発想こそきっと大切になっていく。