重量級ボディから格調高く鳴らす、超弩級プレーヤー
「弩級」を通り越し、もう超弩級オーディオ機器だ。ウォークマンといえば、「屋外で気軽に音楽を楽しむ」ための携帯プレーヤー。それがなんと約30万円なのだ。携帯機の値段なのかと目を剥いてしまうが、音の素晴らしさに納得だ。「凄いウォークマン」がいま登場したのは、歴史的、そしてソニー的な理由がある。
歴史的とは、最近のハイレゾ化の流れでの必然だ。ソニーは2013年に「ハイレゾ宣言」を発し、すべてのオーディオ機器のハイレゾ化に着手。これまで2モデルで、「ハイレゾはソニー」のイメージを着実につくり上げてきたウォークマンが、3代目にして、従来の延長を飛び越え、圧倒的な高みを目指したものづくり、音づくりに挑戦したのである。既に韓国メーカーは50万円ほどのプレーヤーを発売しており、元祖ウォークマンがハイエンドを目指しても何ら不思議はない。
最近のソニーが追求する高級志向も後押しした。700万円の4K液晶テレビ、米国で6万ドルの4Kプロジェクター……など、ハイエンド志向が目立つ。平井一夫社長はインタビューで「ソニーブランドには技術力があり、差異化された商品をお届けするバリューがあります。感性価値と機能価値が合ったものなら、自ずとハイエンドを狙った商品となります。ハイエンドで勝負していくのがソニーらしい商品をつくっていく原動力になるはずです」と語った。このウォークマンは、高級路線の重要な一翼なのだ。
持つ。重たい。なんと携帯機なのに455ℊ もある。オーディオ格言に「重さに音質あり」というのがある。音再生の大敵の細かな振動が抑制されるからだ。偉いところは、昔のオーディオシーンで確立してきた音質向上の基本テクニックを愚直なまでに取り入れたこと。それは、「低インピーダンス化」のためだ。音楽信号が流れる経路やアース路の抵抗を最小にして、ノイズの影響を排除する。
ボディは1.8㎏もの無酸素銅のブロックから削り出した。銅の音がいいのは、基礎知識。内蔵バッテリーからの給電は太い線を4本使い、抵抗を減らした。従来から音の決め手として重用していたOSコンデンサーに加え、新開発の高分子コンデンサーも追加。音の透明感ややわらかさの再現を狙った。
これがウォークマンなのかと、信じられないほど本格的で、重厚にして透明度の高い音だ。ビビッドで稠密に感じ、音の風格、器量、質感が味わえる。リファレンス楽曲「ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』」では、木管の解像感、輪郭感に優れ、打楽器、金管楽器が先鋭であり同時に音が温かく、格調高い。ソニーは独自のハイエンドな音を得たと聴いた。
無酸素銅の塊から削り出し金メッキを施したボディ。背面にはレザーが施され、とにかくハイエンドな仕上がりに。
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