高性能でタフに使える、近未来的なデザイン
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
ラドーは真反対の方向で両義的な腕時計のエキスパートである。〝超硬〞の代名詞で知られる、途方もなく傷に強くて毀れない最先端素材と、斬新な近未来的デザイン。もう一方はロングセラーの「オリジナル」に代表される、機械式腕時計の古典を頑なに守護する立場。このアンビバレンツな魅力がひとつの時計で楽しめる、魅惑のケミストリーが今年の新作「ラドー ダイヤマスターパワーリザーブ」である。
ケース素材のハイテクセラミックスは、スチールと比べて約25%程度軽量で、逆に5倍以上の耐傷性をもつ。非対称に配置されたサブダイヤルは、大胆なネオクラシック・デザイン。その表示こそが、このモデルを特徴づける、ロング・パワーリザーブのインジケーターだ。
いまラドーには、現代の最終兵器とも思える極上の機械式ムーブメントがある。そのパワーリザーブは、なんと80時間。標準的な汎用ムーブメントが40時間台であることを考えても、その高性能がわかるだろう。パワーリザーブのアビリティの高さは優れた実用性、言い換えれば使い勝手のクオリティに直結する。ひと目盛りで10時間分の残り時間を表示するインジケーターは、有能な管理と伝達のシステムだ。もしフル巻き上げでなくても手で巻けば、直ちにフルパワーを表示する。
80時間のパワーは伊達ではなく、木曜日の真夜中にフル巻き上げであれば、放置しても月曜日の朝に動いている。金曜日の昼に外せば、月曜の宵の口までは止まらない。ひとよりも長い週末を、時間を忘れていたいのであれば絶好の腕時計である。連れて行けばさらによく、超硬のタフさ、信頼が置ける100ⅿ防水性能が威力を発揮するだろう。
放射状のサンレイパターンを施したブルーの文字盤も、ノーブルな落ち着きを見せる。「オリジナル」譲りの〝動く錨のシンボル〞が名門ラドーの血脈を誇る、堂々たる機械式の新しい逸品である。
ラドー ダイヤマスター パワーリザーブ