‶ひとつ上の世界”を象徴する、華麗で端正な一本。
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
「ステンレス・スチール製のラグジュアリー・ウォッチ」は、現代ライフスタイルの必需品だ。スピード化するビジネスと、シームレスに繋がるアフターファイブ。フォーマルとカジュアル、エレガントとスポーティという境界を超える腕時計は、身に着ける人の生活の質と満足感を確実に上げてくれる。じつはスイス高級腕時計の世界がこの分野に挑んだのは意外と早く、ピアジェの「ピアジェ ポロ」が名乗りを上げたのは1979年のことだ。「ピアジェ ポロS」は、その正統な末裔たる、魅力的な最新作である。
自社製の自動巻きムーブメントを、サファイアケースバックから覗かせながら、100mの防水というスペック。水平ギョーシェ模様のブラック文字盤に、ドーフィン型の時分針が映える。ラウンドとクッション型の界面にあるシェイプのケースには、ブラックのADLC加工を施したベゼルが精悍さを添えた。
もともと世界的な名声をもつジュエラーでありながら、正統派のマニュファクチュールとしても君臨するのがピアジェというメゾンである。腕時計でも華麗なゴールドモデル、ジュエリーウォッチが、数多くのセレブリティを魅了し続けてきた。
そのメゾンが送り出すスチール製のモデルであるからこそ、貴族的なスポーツであるポロの世界観に添う存在感がふさわしい。強靭で活動的でありながら、華麗で端正。無骨でも粗野でもないスポーツの価値観を、完全に写しとった。
実際ピアジェは、王侯貴族が自らプレイし、トッププロの試合を熱心に観戦するポロの世界のサポートを続けてきている。ポロフィールドがひとつもない日本では考えにくいが、ポロはピアジェとその顧客が共有する観点と嗜好であり、ひとつ上の世界の象徴でもある。この「ポロS」はただピアジェのスチールモデルである以上に、現代のラグジュアリーの意味を問う、特別な腕時計なのである。
ピアジェ ポロ S