シンプルでドレッシィな、独創的フォルム
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
「オクト ローマ」は、ブルガリを代表するコレクション「オクト」に加わった新シリーズだ。バーゼルワールドを前に1月のジュネーブでプレス向けに披露され、即座にその噂が世界中に拡散した。スタイリッシュなブランドにして本格マニュファクチュール、ブルガリへの注目は、やはり熱烈でグローバルである。
すでに定評あるメンズウォッチ「オクト」を、ローマの名のもとに生まれ変わらせた。何より、視覚的にも触感もまったく異なるケースが魅惑的だ。ケースの厚みは、2014年のデビュー以来ベストセラーを続ける「オクト フィニッシモ」同様にフォーマルを指向し、絶妙なフィット感をもつ。その一方でケース径は「フィニッシモ」の38㎜ではなく41㎜。ファーストモデルと同じサイズが、ブルガリらしいアイコニックな存在感を担保した。そしてフォルムは、独創的な八角形をキープしながらスペースパターンを再構築してみせる。110面体から58面体にデザインを変えたことで、カフスからの出入りがスムーズなサーフェスをもった。セラミックをトップにあしらったリューズといった、デザインの仕事も小気味いい。
ファッショナブルの強度をとことん洗練し、スーツスタイルにも最適化。シンプルで上品、しかも持ち重りがしない薄型のドレッシィな「オクト ローマ」は、〝毎日着けたいブルガリ〞だ。搭載されたのは自社製の薄型自動巻き〝ソロテンポ〞ムーブメント。マニュファクチュールの構造美とフィニッシュの美しさを、シースルーで堪能できる。
華麗なピンクゴールドやコンビのモデルが魅力的な一方で、スチールのバージョンがぜひ欲しくなる。ブラウンカラーのアリゲーター革ストラップに、ブラックカラーのステンレス・スチールブレスレットも用意。デイリーユースに最良の選択は、贅沢さと謙虚さが矛盾しない品だろう。「オクト ローマ」は、そうした腕時計である。
オクト ローマ