ハイレゾ音楽プレーヤーを、スマホにしたら?
青野 豊・写真
photographs by Yutaka Aono

ハイレゾ音楽プレーヤーを、スマホにしたら?

ハイレゾの高音質を最大限活かすために、厚さ11.9㎜、重量234ℊと重厚感のあるつくり。実勢価格¥90,000

いまや、携帯音楽プレーヤーはスマホそっくり。デジタルファイルを扱うのだから、形はなんでもよいわけで、以前はスティック型や超小型など多様だったが、最近の主流はスマホの一枚板形。画面が大きく、操作しやすいし、ビジュアルも豊富に表示できる。OSもアンドロイドになり、中身もほとんどスマホだ。それなら……と閃いたのがオンキヨーだ。型も中身もスマホもどきなら、いっそ携帯プレーヤーをスマホにしてしまおう!と。そこで誕生したのが史上初の「携帯プレーヤー・スマホ」DP -CMX1だ。 

でも、すでにスマホというものは立派な携帯プレーヤーでもある。名門ブランド発のスマホは、例外なくハイレゾファイル再生可能。日本オーディオ協会が制定した「ハイレゾマーク」も取得している。スマホと携帯プレーヤーは、すでに形も音楽再生機能も同じになっているのだ。そこにあえて、スマホそのものの携帯音楽プレーヤーを出そうというのなら、既存のハイレゾスマホを圧倒的に超えない限り存在価値はない。 

実際どうなのか、聴き比べてみた。曲はリンダ・ロンシュタットの名作「WHAT́SNEW」、96kHz/24bitファイルだ。まず通信できないアンドロイド携帯プレーヤーのオンキヨーDP -X1。昨年のヒットモデルだ。ボーカルの質感がクリアで、解像感が明確。音の鮮度も高く、テクスチャーも優秀。大手メーカーのハイレゾ対応スマホはどうか。確かにすっきりと伸びておりハイレゾらしい情報量と言えるが、質感がDP -X1とはかなり異なり、音の体積感が小さく、粗く、薄味。安普請な中身が薄い音だ。DP -CMX1はどうか。断然、いま聴いたスマホよりボーカルの質感が上等。体積感がリッチで、強調感がなく、ナチュラルな仕上がりだ。音場が透き通り、ハーモニーが濃い。音の粒子が細かく、解像感も高い。DP -X1とはオーディオ的なクオリティではほぼ同格だ。

相当、音づくりにこだわったに違いない。スマホの内部には音を汚すノイズが飛び交っているからだ。オンキヨーはかつて音質にこだわったパソコンを商品化し、また、高音質なオーディオ・ボードも開発していた。猛烈なノイズ環境の中でいかに、クオリティを確保するかのノウハウが多く蓄積されている。それらを今回は集中的に投入したのである。通信用基板とオーディオ用基板を完全に分離。電源もノイズ源だから、重要な音質部品とは距離的に隔離し、部品をノイズ飛び込み防止のカバーでしっかり覆う。回路はハイエンドオーディオの定番とされるフルバランス構成だ。これこそ、オーディオ専門メーカーの矜持。間違いなくスマホではナンバーワンの音質だ。

ハイレゾ音楽プレーヤーを、スマホにしたら?

ハイスペックな出力端子や金属製のボリュームダイヤルなど、ハイレゾを徹底的に楽しむための設計が随所に。

麻倉怜士
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
※Pen本誌より転載
ハイレゾ音楽プレーヤーを、スマホにしたら?