自社製・新キャリバー搭載の流麗なドレスウォッチ
岩崎 寛(STASH)・写真 photographs by Hiroshi Iwasaki並木浩一・文 text by Koichi Namiki
カールF.ブヘラの「マネロ」は、現代の高級時計が描くひとつの理想像に見える。上質で上品、控えめでスタイリッシュ、現代的な機構とクラシックな佇まい。望ましいが難しい要素を統合することができるのは、腕時計を見つめ続けた伝統の為せる技なのだろう。忘れてはならないのが、カールF.ブヘラは著名な高級時計店を母体に誕生したブランドだということだ。プロの審美眼とつくり手の倫理観が結実した最新作が「マネロ ペリフェラル」である。正調ラウンド形の輪郭線を描く、クラシカルなスタイルのケース。スモールセコンド3針の伝統的な形式に日付表示を配し、くさび形のアプライドインデックスに、ファセットカットを施したドルフィン針が似合う。
そもそもの「腕時計店のブランド」は、本格的な時計のつくり手としても、最初から最高峰を目指した。単なる腕時計ブランドではなく、自社製ムーブメントをもつマニュファクチュールであろうと決めたのである。しかも、最初の自社製ムーブメント〝CFBA1000〞は、ペリフェラルローターを備えた両方向巻き上げの画期的な機構で世界を驚かせた。巻き上げローター=回転錘は、ムーブメントの真ん中につながれるのではなく、外周の無限軌道を走る。ムーブメントの美を鑑賞する視線を一切遮らない、シースルーバック時代の夢の新機軸は、多くの腕時計ファンを魅了した。「マネロ ペリフェラル」は、稀代の名ムーブメントの最進化形である〝CFBA2050〞を搭載する。フリースプラング方式のバランスホイールが施された、最新鋭メカニズムの集積である。一方で、端正なコート・ド・ジュネーブ仕上げが施されたムーブメントの美しさも絶品だ。
機械として優れ、革ストラップ仕様が似合うノーブルなドレスウォッチであり、しかもブレスレット・モデルでは現代的ニュアンスが加わる。オンにもオフにも魅力的な、万能の一本なのである。
マネロ ペリフェラル
※Pen 2017年2月1日号に掲載