デュアルタイム搭載の、NYの名門が贈る限定版。
岩崎 寛(STASH)・写真 photographs by Hiroshi Iwasaki並木浩一・文 text by Koichi Namiki
「ティファニーCT60」は、デビュー後またたく間に世界的ヒットとなった腕時計だ。ニューヨークの薫り漂うその逸品に〝アジア限定〞モデルが登場した。黒文字盤にスパイシーな赤を効かせ、ケースはローズゴールド。セクシーなルックスは、マンハッタンでも銀座でも、目を留めずにはいられない。
外見だけでなく、内部構造とのインターフェースもクールな出来だ。クロノグラフのような2つのプッシュボタンを装備するが、これがローカルタイムの時針を1時間ずつ前後させるセット用。リューズ操作のために時計を外す必要もなく、瞬時に渡航先の時刻に合わせられる。着陸準備のアナウンスで目覚めた愛用者にも優しい装置だ。9時位置に新搭載されたデイ&ナイト表示もローカルタイムとシンクロし、異国の時間へのアジャストをさらに容易にする。
そもそも「ティファニーCT60」のシリーズは、フランクリン・ルーズベルト大統領への誕生日プレゼントに選ばれたティファニーの腕時計にインスピレーションを得ている。大統領は1945年1月のバースディに贈られた腕時計を、翌月のヤルタ会談で着用。その年4月に急逝した歴史的大人物にとって、最後のお気に入りだ。歴史が綾なす伝説のオーラは「CT60」に蘇り、魅力的なリミテッド・エディションに至る。
放射状のソレイユ模様を施したダイヤルに、ゴールドパウダーで彩るアラビア数字インデックスのプードレ仕上げ。極上の質感をもつサーフェスが、美しく絶妙な光のフレアを返す。ポインター式のホームタイムやサブシダリー・ダイヤルのデイト表示と、細部の一つひとつも吟味された。海外に赴く際の腕時計は、かくあるべし。我らはあらゆる外国に行くたびに海を越える、海洋国家の民だ。その機会に絶好の腕時計がアジア限定なのは、ひとつの幸運な符合に見える。
ティファニー CT60