4Kに見合う高音質を放つ、小型スピーカー
テレビの音は悪い――が、常識だ。かつてのブラウン管テレビは図体が大きかったが、それがスピーカーを鳴らすリッチなキャビネットの役割をして、音の問題はなかった。しかし、液晶などの薄型テレビは、スペースが極端に小さく、スピーカーは下を向き、もごもごとした音は貧弱。ハイビジョンや4Kでせっかく画質がよくなったのに音がすごく悪くなったとの声は、市中にあふれている。
そんな文句への福音が、東和電子のテレビ用外付けTW −D77OPTだ。東和電子の社名ではあまり馴染みはないが、オラソニックブランドのオーディオメーカーというと、知る人も多いだろう。CDジャケットサイズの極小単体コンポーネントで話題を集めている新進ブランドだ。
さきほど、「文句」と書いたが、実はまさに私がそうであった。最近、仕事部屋に某社の4Kテレビを入れたのだが、これが驚くほど音が悪い。そこで、このスピーカーをテレビ本体から光ケーブルで接続し、画面の両脇にセットした。音の質が数十倍は向上した感覚だ。ダイアローグやナレーションの人声が断然、明瞭になった。それも単にハキハキと聞こえるという次元を超え、テクスチャーが繊細で、声の機微も明快にわかる。音の輪郭がくっきりと描かれ、音楽や効果音からもしっかりとした力感がある。
実は、同形の卵型スピーカーはパソコン用の外付けや、Bluetooth用のパワードスピーカーとして既に定評を得ている。それをテレビ用に仕様変更したのがこれ。パソコン用スピーカーをある大手量販店のトップに見せたところ、「テレビの音が悪いので、ぜひ、これをもとにテレビ用のスピーカーをつくってほしい」との要望が寄せられたという。
ポイントは卵型と増幅回路。スピーカーキャビネットは通常、箱形だが、エッジが尖っているとユニットから発せられた音波が乱れる。しかしこれは卵型だからキャビネット表面をスムーズに音が進み、素直で見渡しのよい音場が得られる。このコンパクトさにしては低音が意外にリッチなのは、背面に搭載されたパッシブラジエーター(共振専用ユニット)の働きとSCDS(SuperCharged Drive System)の力だ。SCDSは音信号の波形の特性を利用し、小さな波の時は余った電気をキャパシターに蓄え、大きな波がきた時に使う仕組み。小信号時に余る電気をコンデンサーに蓄え、大信号時に大電流を取り出すというハイブリッドカーのような仕掛けだ。
左右2体なので、スピーカー間隔をテレビのサイズに応じて自在に設定できる。光ケーブルでの接続では、オートパワー機能によりテレビとスピーカーの電源が連動するのも便利だ。劣悪なテレビの音の救世主として推奨したい。
メインユニット(左上)とリモコン。スピーカーの電源はテレビの電源に連動し、自動的にオン/オフできる。