伝説のライダータブを配した、日本限定モデル
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
生粋のスイスブランドであるブライトリングにとっても、日本は特別な存在である。腕時計に目が肥えており品質に妥協がないというのが、腕時計の世界のジャパン・マーケット観。熱狂的なファンを日本で多数抱えるブライトリングにとって、この国はプライドと自信の地にほかならないだろう。そのブランドが今年問う、決定的なスペシャルモデルが「クロノマットJSP」である。
“ジャパンスペシャル”の頭文字をフラッグシップの名に重ねた、日本だけの特別限定モデル。しかもそのスペシャルさは普通ではなく、伝説の「ライダータブ」を再装備してしまった。時計ファンならばご存じだろうが、回転ベゼル上のライダータブは、2009年までのクロノマットのアイコン的装飾。取り外しが効くビス留めで、15と45 の数字を入れ替えて経過時間と残り時間を切り替える。そもそも本職のパイロットの要請によって誕生したクロノマットを象徴する、パイロットのための装備であった。それが、今回の「クロノマットJSP」で、特別なサテン仕上げベゼルとともによみがえる。
世界のどこにもない、とびきりのリミテッドエディション。一方でベストセラーをばく進する現行クロノマットが採用した、15分ごとに反復するベゼルのスロープも装備する。復刻ではなく、過去と現在を繋いで未来に向く、魅力的な新作である。両側に蓄光を配したインデックスの設計、スクエアパターンがない文字盤のサーフェスなど、見どころも満載だ。心臓部分は、自社開発・自社製ムーブメント“キャリバー01”。70時間以上パワーリザーブ、24時間調整可能な日付表示、500m防水の性能に、5年間の保証も付く。
それでいて特別に価格が高いわけではなく、その逆をいくサプライズで、ファンを驚かす。“日本限定”の意味は、輸入車が左ハンドルを右に付け換えるような話ではなく、審美眼と価値観、信頼感のレベルに昇っているのである。
クロノマット JSP