多様性で物語る、シンボリックな限定モデル
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
ショパールの中でも「LUC」の名を冠した腕時計は、特別の意味をもつ。イニシャルで表した創業者ルイ-ユリス・ショパールに対しての敬意であると同時に、同名の自社製ムーブメント搭載の証拠であるからだ。魅惑のジュエラーであると同時に、硬骨のマニュファクチュール。ショパールの両義的な魅力を語る、シンボリックな腕時計である。その最新作「LUCXPS ツイストQF フェアマインド」は、ドレッシィな極薄のリミテッドモデルだ。
65時間というパワーリザーブの長さを誇りながら、それがスタイルには響かない。ケース厚は7.20㎜にまで追い込まれ、スキニーでノーブルな仕立てを見せる。その秘密は、マニュファクチュール独自の〝積載式二重香箱〞のテクノロジーだ。ムーブメントは3.3㎜という薄さながら、驚異的な性能に到達。COSCクロノメーターの精度認定を取得した上に、さらに厳しい基準を課す〝カリテ フルリエ〞認定を受けた。
COSCが裸のムーブメントを試験するのに対し、カリテ フルリエは時計に組み上げた状態での試験を行い、品質を認定する。さらに、部品レベルからスイスメイドが貫かれていることを要求する、ワインと同様の原産地統制名称の性格ももつものだ。このふたつのタイトルを得たほかならぬショパールの時計は、実質的に3重のブランド価値をもつ。
さらにケース素材である〝フェアマインド〞ゴールドの価値が重なる。採掘の過程が明らかで、採掘者への正当な報酬の支払いが保証された金をほかの金合金と混ぜることなくこのケースのローズゴールドがつくられる。文字盤は採掘された金塊から着想を得た文様を刻み、ガルバニック処理で仕上げたものだ。公正に取引される金は、持続可能なラグジュアリーの象徴であり、社会的・精神的な意味での世界ブランドにほかならない。そんな素材が、何層にも価値を重ねた特別な腕時計を完成させるのである。
L.U.C XPS ツイスト QF フェアマインド