ミニマルなデザインを追求した、極薄な個性。
岩崎 寛(STASH)・写真photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki
スウォッチファンが待ちわびる、年数回の新作発表。その2017年秋冬コレクションで、既にマストバイと呼び声が高いのが「SKINSUIT(スキンスーツ)」である。
〝スキン〞は言うまでもなく、スウォッチ全体の中でも極薄のプロジェクトライン。薄くて軽いという特徴、手首への負担と装着感が限りなくゼロに近い空気のような存在感がほかにはない個性として認められ、熱狂的なファンを惹きつけた。クリエイティブ職やアーティストに信奉者が多く、現代の時計の中でも突出した存在として受け入れられたのも、固有の価値をもつこの時計ならではだ。時計を着けなさそうな人が唯一認める腕時計であることも少なくない。スウォッチの側でもそれを意識しているのか、多彩なカラー、デザインのバリエーションをもつスキンの新作には、必ずと言っていいほど、抑制の効いたミニマルなモデルを入れる。今回の秋冬では「SKINSUIT」がそれに該当するものだ。
白いダイヤルに、4カ所のアラビア数字とバーインデックス、ブランドロゴは黒プリントですっきりと表示。これ以上絞れないほど切り詰めた要素だけで構成され、日付表示なども含めたプラスアルファを極力避けている。ケースとブレスのカラーである〝ソリッドシャイニーブラック〞が無彩色に輝きを添えるが、決して出過ぎてはいない。ループとバックルも同色で、全体は均整のとれた統一感を見せる。腕時計それ自体が主張するのではなく、着ける人間を引き立てる時計なのだ。
デザインだけでなく、時分針には夜光が仕込まれ、視認の機能も確保。日常生活に困らない防水機能もある。そして「スキン」のすべての新作の中で、最もベーシックな設定にあり、価格もいちばん低い。安いという理由で選ばれる時計などでは断じてないからこそ、シンプルな魅力がまた際立つのである。
スキンスーツ