今後のパネライが進むべき道を、ジャンマルク・ポントルエCEOが語る

今後のパネライが進むべき道を、ジャンマルク・ポントルエCEOが語る

文:並木浩一

2018年4月からパネライを率いるCEOジャンマルク・ポントルエ氏。フランス・ナント ビジネススクール卒業。ロジェ・デュブイCEO等を経て2018年4月より現職。

パネライが今年発表した今後のビジョンで、もっとも注目に値するのが環境保護に対する鮮明な姿勢だ。一連の取り組みは“エコロジコ”プロジェクトと呼ばれ、製品の開発・製造工程や社屋のエナジーフリー化などを含めて、一貫したシステムに組み上げた。「今まで取り組んできた環境問題へのソリューションを形にすることができました」とポントルエCEOは言う。さらに驚くべきは、そのために協力した外部の協力企業を公表したことだ。

「オープンソースとして、パネライが開発した技術、素材の情報を公開しました。たとえ競合他社でも、パネライが開拓したサプライヤーに接触し、パネライが共同開発した技術や素材を利用することができるようにしたのです」。環境保護につながる、全ての手の内を晒して見せたのである。

パネライは海をルーツとする時計ブランドであり、その環境保護には誰よりも敏感である。

環境保護の大義のために、企業秘密という狭量な考えを、パネライは捨てた。「パネライはひとりではなく、他企業を巻き込んで環境保護に貢献します。時計業界全体の意識を変えたいと考えているのです」。商品に付属する紙の取扱説明書を廃止し、デジタル版をダウンロードする方法に改定したことで、毎年22トンの紙を削減できる。ヌーシャテルの工房はソーラーエネルギーを利用し、使用する水も循環させている。パネライの腕時計の魅力は不変でも、ビジネスの方法を変えたのである。“エコロジコ”プロジェクトの一連の試みはPV化されているが、そこに出てくるセリフは「「Do you want to be part of the solution?(一緒に解決しませんか?)」。そしてパネライは、国連が宣言した「持続可能な開発のための海洋科学の10年(2021-2030)」の一環として、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC-ユネスコ)と提携したのである。

パネライ創業地のフィレンツェの街並みは、まさに「イタリアらしさの象徴」。デザインはミラノの自社スタジオ、製造はスイスの自社マニュファクチュールが担当する。

今年の新作は“エコロジコ”プロジェクトを反映したモデル群をはじめ、魅力的なクロノグラフ、初の“女性向け”モデルが注目だ。どのモデルも、イタリアらしい魅力に貫かれている。「パネライとは、イタリアのデザインそのものなのです。フィアット・チンクエチェントやヴェスパと同じですね」とポントルエCEOはいう。事実パネライはスイスではなく、イタリアのミラノにデザインスタジオを持っている。「パネライの時計はスイスで製造されていますが、イタリアの気質を反映しているのです」。それはパネライにとって、理想的なスタイルであるという。「スイス人は勤勉ですね。そしてイタリア人は他の国の人々より生活を楽しむ方法を知っています。創造性にあふれ、デザインの才能があるのです」

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