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窓を大きく開けて部屋に風を通したくなる季節。ほのかな香りがふっとよぎると癒されますね。今回はそんな瞬間をインテリアに取り入れる、香りのプロダクトを紹介しましょう。フェミニンなデザインのものが主流だったアロマディフューザーやアロマキャンドルなどに、クラフツマンシップやデザイン性を感じるものが増えてきました。
東京・神宮前のエルムタージュは、ヨーロッパを中心としたフレグランスアイテムを主に、香りのある暮らしを提案しているショップです。プレスの山野哲昭さんが、「天然原料を主体に製造しているメーカーのものをなるべくセレクトしているので、化学的な香りや成分による不快感がほとんどないんです」と言うように、シリコン、パラベン、パラフィンなど石油成分を使用せず、デリケートで穏やかな香りを生かしたアイテムが揃います。
なかでも代表的なブランドが、フランスの「マドエレン」。ユニークな名前はマルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の第1章に登場する、焼き菓子のマドレーヌを紅茶に浸して食べたことから過去の記憶が一気によみがえる、というエピソードから名づけられているとか。家族経営のこのブランドは、プロヴァンス地方のサンジュリアンに16世紀から残る民家のアトリエで、世界各地から取り寄せる最良の状態の植物から蒸留抽出した成分をブレンドし、独自の香りを生み出してきました。石油成分を使用しないほか、動物実験も行わないというポリシーを打ち出しているエシカルなつくり手です。
パッケージにも独自の世界観が反映されていて、視覚にも香りにも訴えるインテリアオブジェとしての魅力を放ちます。手製のラベルが貼られた鉄製のキャニスターは、モロッコで職人が一つひとつを手作業でつくったもの。無機質な容器には香りを染み込ませた黒い多孔質の溶岩石とオレンジ色の樹脂のポプリ2種と、アロマキャンドルが詰められています。
「オーナー一家はアーティスト気質で、香りのコレクションには定番と呼べるものはあるものの、いつ製造中止なるかわかりません(笑)。すべてが限定品であり、シーズンズスペシャルであると言えるのかもしれません」
実際に製品はすべて半年前のオーダーを受けてから製造するため、香りもプロダクトも毎シーズン限られた点数しか入荷しないそうです。エルムタージュでは、柑橘類の「ネロリ」、イチジクのフルーティーさと木質の香りがブレンドされた「フィグ」、そしてフレッシュハーブとミントがブレンドされた「スピリチュエル」が人気のほか、タバコなどスモーキーな香りをベースとした男性的なものもセレクトされています。ポプリはお気に入りのトレーに入れて部屋の片隅やエントランスなどに飾っても。付属のリチャージャーオイルを染み込ませれば香りがよみがえります。使いやすいルームスプレーやオードトワレなどもシックなボトルデザインで何種類か揃えたくなります。