北欧ヴィンテージの魅力、その真髄に触れてみよう。
写真:永井泰史 文:小川 彩

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今年の4月で10周年を迎えたエレファント。オーナーの吉田さんがオープンから扱ってきたエリック・ホグランの品揃えと質は、国内でも群を抜きます。

テナント建て替えのため一時移転していた北欧のヴィンテージショップ「エレファント」が、この4月にもとあったアドレスに戻ってリニューアルオープンしました。表参道の閑静な住宅街にあるマンション1階の店舗は、通りからエントラスを見通せる一室で、気軽に立ち寄りやすくなったかもしれません。

1950年代から60年代の北欧でつくられたテーブルウエアやアートピースなどのヴィンテージアイテムを中心に扱うエレファント。なかでもエリック・ホグランの作品が充実していることで知られ、根強いファンに支持されています。「画像だけではなかなか伝わらないホグランの魅力に直に触れてもらいたくて、実店舗をはじめたと言っても過言ではありません」と笑うのは、オーナーの吉田安成さん。北欧ヴィンテージアイテムの魅力について、まずはホグランの作品から見ていきましょう。

クリスタルの灰皿をさまざまな色や形でつくったホグラン。キートレイやペーパーウエイトとして使っても素敵です。星座シリーズ『射手座』の灰皿 φ7.5cm ¥10,800、女性のモチーフの灰皿 φ9cm ¥9,720

ホグランがボダ社に在籍していた時代のアートピース(H25.5×W33.5×D11.5cm)。透明なガラスの塊に残る手彫りの跡とライオンの表情が印象に残ります。¥151,200

シンプル&モダンという北欧デザインのイメージとは裏腹に、エリック・ホグランの作品からは力強くプリミティブな印象を受けます。ストックホルムの国立芸術工芸デザイン大学・コンストファックで彫刻を学び、1953年から73年までガラスメーカーのボダ社でデザイナーとして活躍したホグランを、吉田さんは「かなり変わり者のデザイナーだったようです」と評します。

学生時代にメキシコのフォークアートに影響を受けたり、貧乏旅行をしている時に宿泊した農家で見た気泡入りガラスのビール瓶にインスパイアされたり……およそモダンデザインとは対極のファクターに強く惹かれたホグランの作品は、手吹きでぽってりと厚みのあるフォルム、動物や人型などプリミティブなアイコンやわざと気泡をたくさん入れた素地など、同時代のデザイナーが手がけたプレーンでシンプルなプロダクトとは一線を画すものばかり。「でもなぜか野暮ったくならない、不思議な魅力があるんです」と吉田さんは言います。

女性のモチーフを型押ししたバナキュラーな魅力にあふれる手吹きのデキャンタ。ワインやスピリッツだけでなく、これからの季節はハーブウォーターなどを入れても良いでしょう。¥21,600

スウェーデンの照明器具メーカー、アトリエ リクタンで製造されたペンダントランプ。ガラスから漏れる灯りが美しく、フロアやサイドテーブルに置いても。¥178,200

鉄とガラスで作られたシャンデリア、キャンドルスタンドやアートピースを始め、人気の人型の文様が押されたデキャンタ、灰皿、トレー、そして花瓶といったテーブルウエアなど、ホグランの作品を幅広く買い付けている吉田さん。2009年からは毎年ホグラン展を開催し、その魅力をより多くの方に伝える機会をつくってきました。異端だったかもしれませんが、ホグランの作品はプリミティブな要素をモダンデザインに取り入れる、そんな新鮮なインスピレーションを現代の私たちの生活にもたらしてくれる存在です。「決してメジャーな存在ではなかったし理解者も多くはなかったけど、それに負けずつくりたいものをつくり続けた力強さが作品から感じられるのです」と吉田さんは言います。

では次にホグランと同時代にモダンデザインのメインストリームだったアイテムを見ながら、吉田さんが大切にしているヴィンテージの魅力を発見しましょう。

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