ハンス・コレー
近年、屋外で使用するデザイン性の高い家具が広がりを見せています。ハンス・コレーが1938年にデザインしたアルミ製の名作椅子「ランディチェア」は、そのずいぶんと早い先駆けといっていいかもしれません。近年まで市場ではあまり見られなかったものの、発表から76年の時を経てヴィトラが復刻しました。
椅子の素材を大別すると木とプラスティック、そして金属の3つがあります。木は曲げや成型合板、プラスティックはFRP(繊維強化プラスティック)など、加工技術の進歩とともにさまざまな製造方法が開発されました。一方、金属の椅子はバウハウスを中心とする鋼管を用いたデザインが出発点です。
コレーが用いたアルミに限って見ていくと、マルセル・ブロイヤーが1932年にアルミのパイプを用いた寝椅子を発表しています。ただこれは鋼管による椅子と造形上は変わらず、のちに成型合板でリ・デザインされています。一方コレーの手がけた「ランディチェア」は、アルミ板を三次元成型した先鋭的なものでした。見た目にも軽快な丸い穴は軽量化と屋外で雨水がたまらないための工夫です。さらに構造的に強度を高める役割もあります。
39年にはチューリッヒで開催されたスイス全国展覧会の屋外用の椅子として採用され、この博覧会「ランデスアウスシュテルング」を象徴するものとして「ランディ」と名付けられました。スイスの主要産業であったアルミニウムの特性を活かした造形と加工、無駄を削ぎ落としたミニマルで洗練された美しさ。それが、長年に渡ってデザインアイコンのひとつとして存在し続けている所以でしょう。
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