ボーエ・モーエンセン
ピープルチェアとも呼ばれる「J39」は、ボーエ・モーエンセンが「デンマーク市民のための高品質で低価格の椅子をつくる」というミッションに応えて、5年の歳月をかけデザインしたもの。シンプルで堅牢なデザインはいかにもモーエンセンらしく、70年以上経ったいまも人々から愛され続けています。
20歳で家具マイスターの資格を得て、親友のハンス・J・ウェグナーらとともにデンマークにおける近代家具デザインの黄金時代を作り上げたボーエ・モーエンセン。1942年、デンマークの生活レベル向上を目指す組織であるFDB(デンマーク生活協同組合連合会)に家具部門「FDBモブラー」が立ち上がると、彼はプロダクトデザインマネジャーを引き受けます。50年の退職まで人々のための家具を多くデザインし、デンマークの人々の日常生活に寄与しました。
その一つで、モーエンセンのダイニングチェアを代表する名作として知られるのが1947年に誕生した「J39」です。いまも個人邸から公共の場まで広く使われ、デンマークでもっとも売れている椅子の一つと言われます。高品質で低価格であるだけでなく、簡素なデザインとペーパーコードによる座面によるチェアは、特別な知識がなくても組み立てができるため、発表当初は人々の雇用も生み出しました。まさに「ピープルチェア」と呼ばれる所以です。現在はフレデリシア ファニチャーが生産、販売をしています。
生涯を通じて歴史ある家具から自分のデザインを発展させたモーエンセン。「J39」は、師匠であるコーア・クリントが教会のためにデザインした「チャーチチェア」の構造を簡略化して再解釈したもので、アメリカのシェーカー家具からも着想を得たといいます。そして「J39」自体も、親友のウェグナーやジャスパー・モリソンら、ほかのデザイナーにインスピレーションを与えていったのです。
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