Vol.16 リザルトチェア
Vol.16
Vol.16 リザルトチェア
リザルトチェア

フリゾ・クラマー ヴィム・リートフェルト

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

ダッチデザインを代表する「リザルトチェア」は、いまもオランダでよく目にする椅子です。世界中で名作椅子が生まれたミッドセンチュリー期にデザインされ、その特徴的な逆V字脚の形状から「コンパスチェア」と呼ばれ親しまれました。数々の椅子に大きな影響を与えたものの生産が途絶えていましたが、2017年にデンマークのHAYがこの名作を復刻させたのです。

復刻には当時このチェアを開発したオランダのAhrend社が全面協力し、オリジナルの設計を忠実に再現しています。サイズはW455×D485×H810×SH460mm

従来のスチールパイプの椅子にない新しいデザインと質実剛健な機能性。1958年にフリソ・クラマーとヴィム・リートフェルトが共作して生まれた「リザルトチェア」は、民衆の椅子を目指したといいます。ヒューマニズムを尊重する二人は、物資が不足する戦後に民衆の役に立つ家具を安価で提供したいと考えていました。リーズナブルな価格で製品を展開するHAYから復刻されたのは、その思想に共鳴する部分があったからなのかもしれません。

薄く細い脚は板状のスチールをU字型に曲げることで強度を確保し、プライウッドの座面を支えます。スチールとウッドを組み合わせたインダストリアルな面持ちは、前回紹介したジャン・プルーヴェの「スタンダード」に通ずるもの。クラマーはプルーヴェよりも軽量で低コストの椅子を追求し、より荷重に耐えられる構造を実現させています。

家庭のダイニングで使うにはインダストリアルなデザインも相まって印象が強すぎるかもしれません。そんな時は復刻で追加されたカラーパレットを選べば、インダストリアルな印象も和らぎます。たとえばベージュを選ぶと明るく現代的な印象に。復刻によって名作に新しい価値がもたらされています。

V字脚の構造は、リートフェルトがクラマーのデッサンの横にあった走り書きから着想を得たといいます。黒いフレームは、よりインダストリアルな印象を与える力強い一脚です。

仕上げの異なるプライウッドの座面に加え、従来にはなかった明るいカラーパレットが加わったことで、さまざまなインテリアに合わせやすくなりました。

Vol.16 リザルトチェア