進化を止めない、老舗による革新のミラーレス
「老舗とは革新の連続体である」。そんな格言をまさに体現しているのが、ライカの新製品TL2だ。新製品といっても、かつて本欄でも採り上げたことがあるライカT(2014年)のモデルチェンジ版だ。変更部分はCMOSの画素数(1630万が2424万へ)、画像処理エンジン「MAESTROII」、ソフトウェアといった内の部分で、基本フォルム、デザインはほぼ不変だ。
3年前の初代の登場には驚いた。あのライカが、こんなにも先進的なカメラをつくるのか、と感嘆した。いま新版を見て触っても、まったく同じ思いを抱く。3年前もいまも同じ感慨なのは、この間、どこからも、この著しく跳んでいるカメラへの追随が出てこなかったからだ。つまり未だ世界的にも、その先駆的な形と素材感と操作性は、ワン・アンド・オンリーの存在なのだ。
ライカTL2の画期性は3つある。ひとつが大胆にもスマホの造形と操作性を採り入れたこと。スマホは一枚のプレートだ。薄い板にディスプレイが貼り付けられている。どこにも突起はなく、各種スイッチ類はフラット形だ。ライカに限らず、一般のカメラの形はライカM型からの流れで、ボディ上面にシャッター速度や絞リダイヤルが置かれるのだが、ライカTL2は違う。シャッターボタンを除くとスマホのように完全にフラットだ。ふたつあるダイヤルも出っ張ることなく、フラット面に収まっている。
写真を再生する操作も面白い。画面を垂直方向に上部から下方向にスワイプするのだ。するとライブビュー画面が再生画面に一変。画像送りは水平のスワイプで、画面拡大・縮小は斜めのピンチイン・ピンチアウトで、ライブビューに戻るには、下から上へスワイプ…と、スマホそのもの。スマホ内蔵カメラの操作体系をそっくりそのまま採り入れた。社会で流行る最新の操作術を採り入れる老舗の積極性に拍手したい。
2番目の画期性がこだわりの極みともいえる、堅牢なボディ剛性を実現したこと。両手で曲げようとしても、まったくたわまない。一般的にカメラ構造は面の組み合わせだが、これはアルミの塊を削り出したという完全な一体ボディだからだ。
ここまで述べたことは、初代モデルの復習でもあるのだが、3番目の画期性が、画質の大幅向上。初代の時も解像感と色のグラデーション再現に感心したものだが、CMOSと処理エンジンを最新化した成果が顕かだ。より画像が緻密になり、非常に細やかな質感がていねいに表出される。影と明部の対比も鮮やかで、特に光の質感再現に優れる映像だと思った。電源ONの立ち上がり、画面転換などの速度も目立って速くなった。イノベーションを尊ぶ老舗ならではの現代性だ。
スマホライクな操作性を取り入れた液晶。最新モデルでは感度が大幅に向上し、より素早い撮影が可能に。
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