ミラーレスに凝縮された、圧倒的描写力。
建築、ファッションなどの専門分野にて世界的に高い評価を得ているプロ仕様専門カメラメーカー、ハッセルブラッドが中判デジタルのミラーレスを開発。なんと中判にして、35㎜判の一眼レフカメラ並みのコンパクトさを実現した。こうなると、一般ユーザーもハッセルブラッドを我が物にすることは夢ではない。
ハッセルブラッドは長年、写真のこだわりの象徴であり続けてきた。1841年にスウェーデンで創業し、世界的な中判、大判カメラメーカーに発展。さらにデジタルになっても令名の高さは変わらない。そんな誇りとこだわりを象徴する「HANDMADEINSWEDEN」の刻印が、本機「X1D」に与えられている。
特に感動したポイントがふたつある。第一にセンサーと画質だ。レンズをマウントから外すと、ミラーレス構造なので、画像センサーがむき出しで見える。43・8×32・9㎜もの大きさだ。一眼レフカメラで、高画質の象徴とされる35㎜フルサイズセンサーが24×36㎜だから、いかに巨大であるかがわかろう。画素数は5000万もあるが、そもそもセンサーサイズが大きいので、1画素あたりの集光量も圧倒的に多い。撮影した画像は実に自然で、実に峻厳だ。黒から白側への階調の推移が非常に円滑で、稠密。45㎜標準レンズで、女性モデルの顔を近接撮影したが、まるでフェルメールの絵画と見まごうような、階調性と色の緻密さ、細部の誇張のなさ、そして柔らかなトーンが得られた。きれいなボケがインフォーカス部のすぐ後ろから始まるのは、大サイズセンサーならではの表現性だ。
2番目の感動は「重いが軽い」ことだ。中判デジタルとしては軽くしたというが、それでも重さは約725g 。物理的には重たいのだが、使う時には意外に軽い。右手でグリップ部分をしっかりと握り、左手の甲でボディ底部を支え、左手の親指と人差し指+中指でレンズを持つと実に安定し、あまり重さを感じさせない。グリップと右手は、まるで吸い付いているかと思えるほどの心地よき密着。表面のラバーの触覚が気持ちよく、グリップのアールもちょうどいい感じで指の曲がりに合致する。ボディは堅牢なアルミ削りだし。手触りに本物感と充実感がある。
沈胴式のモードダイヤルを押し出して回すと、ディスプレイの真ん中に、そのダイヤル像が現れ、リアルダイヤルの回転に同期してダイヤル像も回る。ビューファインダー内部の液晶ディスプレイでも同様にダイヤル像が出るので、ファインダーを覗きながら、手元を見ることなくモード変更が可能。スムーズな撮影にとって素晴らしい工夫だ。ハッセルブラッドならではのこだわりが満載の画質と操作性、モノの魅力に何度も感動した。
ボディと同時に発売されたレンズは、左の45㎜と、右の中望遠レンズ(90㎜F3・2、¥322,000)。