カリフォルニアなのに六本木心中!? 「あなたなしでは生...

東京車日記いっそこのままクルマれたい!

第15回 フェラーリ カリフォルニア T/Ferrari California T

カリフォルニアなのに六本木心中!? 「あなたなしでは生きてゆけぬ」が妙にリアルなスーパークーペ

構成・文:青木雄介

編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

カリフォルニアTのテイラーメイド仕様は、シートやインパネにジーンズ生地があしらわれてる。最初聞いたときは中東かインドの王侯の休日みたいな「履いてみました」感を想像してたけど、あら不思議。もっとジーンズ面積を増やしたくなるようなタルガトップに合う組み合わせだった!

OMG!フェラーリ・カリフォルニアT! 嗚呼、もう美しいです……、その御姿。このカリフォルニア・シリーズが世に登場してから、もう8年。当時、マイアミバイスの原稿を書いてて、「ソニー・クロケットなら間違いなくカリフォルニアに乗るなぁ」なんて思ってた訳だよ。このドラマ、潜入捜査官である主人公のソニーはデイトナ(356GTB)、テスタロッサときて、映画ではF430とフェラーリを乗り継いでいく。虚構の世界に身を置き、危険な任務につく主人公を物語るのに、フェラーリは欠くべからざる演出ファクターであり、相棒であり、代名詞的な存在だったんだよね。


カリフォルニアはFRレイアウトのV8クーペで、ドラマのデイトナ(レプリカでフォードのV8エンジンを積んでたらしい)を彷彿させるし、側面のシェイプはクラシカルかつ肉感的で、いかにも女性大好きのソニーが好みそうなスタイル(笑)。で、今回乗った、ターボが搭載されたカリフォルニアTも、まさに潜入捜査官的な表の顔と本性を隠している2フェイスな感じがたまらなかったね。本当にマイアミバイス(笑)。普通に足としてクルーズしてたら、さっさと5、6速に入れてまったり走るし、信じられないぐらい音も静か。フェラーリであることも簡単に忘れさせてしまう。


でも一度アクセルを踏んだ途端、エグゾーストノートをその開度に応じて自在に変えるわけ。そしてさらに踏み込めば、咆哮とともに一気に背後の世界を置き去りにしてしまう。速度をあげるに従ってエグゾーストノートは連続した通底音となり、その高まりとともに車体の挙動はいよいよ安定していく。そしてフロントガラスの中心からすべてが放射され吸い込まれてく世界へと到達。ドーパミンの高まりから、エンドルフィンの静かな海へ。「ようこそ、スーパースポーツの世界へ。これは幻、夢のようなエクスタシー。また下界に降りたら、普通に何気ない顔をして暮らすんだよ」って彼女に言い聞かせられる、みたいなね(笑)。あははははは。そういう背徳の匂いがするんだな。


そんなそもそもフェラーリがこだわり続けてきた速力による官能の世界はそれとして、全体的な走りはターボ然り、デュアルクラッチやカーボンブレーキといったここ最近のトレンド技術で磨かれることで、よりシャープになった印象。FRで4座のV8ターボという構造がフェラーリらしいのか、という話は置いとくとしても、否が応でも他ブランドと比較されがちなこのスポーツクーペ構造で、それでいて一線を画すフェラーリらしさを保ってるって、ものすごくそそられるよね。それって内面の矜持や美しさが品となってあらわれる人格みたいなもの。


高級車がならぶ六本木ヒルズにあっても、ひとり女優がいるかのような佇まい。そんな速力によるエロスとタナトスの世界から来た美しい獣を、日常的に乗りこなす生活を想像するに、乗って周って帰ってこれる首都高がある東京はつくづく最高だと思うんだ。そりゃ昔から、六本木でフェラーリを見る訳だよ(笑)。カリフォルニアTは乗り手を選ばないけど、走る道は選ばせたいもんね。クルマれたいというより、いっそ添い遂げるかい!? みたいなね。罪なクルマだな、しかし。

Ferrari California T / フェラーリ カリフォルニア T

●エンジン形式:3.8リッターV型8気筒ツインターボ
●最高出力:560ps/7,500rpm
●最大トルク:755Nm/4,750rpm
●トランスミッション:7速デュアルクラッチ
●車両価格¥24,500,000

問い合わせ先:フェラーリ・ジャパンコミュニケーション
TEL:03-6890-6200
http://www.ferrari.com/