新生活を一緒に始めたい、アンダー1万円の美的ボールペン5選。
始まりの季節には、やはり筆記具を新調したい。ひと口に筆記具と言っても万年筆やシャープペンとさまざまあるが、日常で使う機会が最も多いのは、ボールペンだろう。
手にするだけで少し改まった気持ちになる真鍮のペンや、持ち主の格も上げてくれそうな機能美あふれるペン……。今回は、アンダー1万円で手に入る、見た目も書き心地もワクワクするようなボールペンを紹介する。
始まりの季節には、やはり筆記具を新調したい。ひと口に筆記具と言っても万年筆やシャープペンとさまざまあるが、日常で使う機会が最も多いのは、ボールペンだろう。
手にするだけで少し改まった気持ちになる真鍮のペンや、持ち主の格も上げてくれそうな機能美あふれるペン……。今回は、アンダー1万円で手に入る、見た目も書き心地もワクワクするようなボールペンを紹介する。
キャップ式でもノック式でもない。マットなアルミニウムの本体と真鍮のネジ、そして芯という限りなくシンプルなボールペン「Neri(ネリ)」。モレスキンのクリエイティブ・ディレクターなども担う、イタリア・ミラノを拠点とするインダストリアル・デザイナーのジュリオ・イアケッティによるデザインだ。
アクセントとなっている真鍮のネジは、芯を好みの長さにネジで調整できるだけでなく、デスクから転がり落ちることを防ぐストッパー的な役割も果たす。毎回のネジの調整がちょっと面倒くさそう……と思いきや、片手で調整できる絶妙な配置となっているのでご安心を。
輝く真鍮の風合い、手にした時の適度な重み。キャップを閉めた状態での、無駄を削ぎ落としたデザインも美しい。「BRASS PEN(ブラスペン)」は、コクヨが手がけるライフスタイルショップ「THINK OF THINGS(シンクオブシングス)」のオリジナル商品。精密機械加工によってディテールまで美しく仕上げられており、まるで万年筆かのような重厚さをもつ。
力の加減によってインクの濃淡や筆跡が出る点も味がある。真鍮ゆえ、長く使うほどに風合いが出てくるペンは、持ち主とともに味わいを増すもの。ぜひ一本は持っておきたい。
「ystudio(ワイスタジオ)」は、台湾のデザイン会社「物外設計」が手がける文具ライン。剥き出しの真鍮のクラシックシリーズや、付属のサンドペーパーで自分好みに塗装をカスタマイズできる「ブラッシング」シリーズなど、「手書きをする特別な時にふさわしい文具」というテーマでつくられる、真鍮製のペンの人気はヨーロッパへも広まっている。マット加工した樹脂と真鍮とを組み合わせた「レジン」シリーズは、2019年に発売されたモデル。鉛筆のような六角軸のデザインや、ホワイト、ブラック、レッドと真鍮とのコンビネーションは、クラシカルな印象を抱かせる。
ストレスなくスイスイとペンが進む、ローラーボールの書き味も小気味いい。「物」の「外」にある趣を伝えたいという、ブランドの姿勢が反映されたボールペンだ。
東京・蔵前にある文具ショップ「カキモリ」のオリジナル商品の中でも、人気が高いのがこのローラーボールペン。万年筆用インク専用のボールペンという、ユニークなシリーズだ。
魅力は、カキモリ顔料インクの色の豊富さ。日常で使いやすい黒やブルーにはもちろん絶妙なバリエーションが揃うが、他にも「HARVEST GOLD」や「LIME SHOCK」「TWINKLE YELLOW」など、ネーミングからして心躍るようなカラーを自由に選ぶことができる。カラフルなインクで文字やイラストを書いていると、懐かしいような、ちょっと童心に帰ったような気持ちになれそうだ。
1930年の創立以来、世界中でファンを獲得してきたドイツの筆記具メーカー「ラミー」。胴軸にアルミニウムを採用した「ラミーアルスター」は毎年、限定カラーがリリースされている。2020年の限定カラーは「トルマリン」。艶のある鮮やかなブルーグリーンは、目にするたびに気持ちをリフレッシュしてくれそうだ。グラファイトやディープパープルなどの定番カラーに加えて、仲間入りさせたい。
ラミーアルスターのボールペンにはキャップ式もあるが、日常使いにはやはり、片手で取り出してすぐに使えるノック式が便利。ポケットに留めやすい大きなグリップなど、機能美に基づいたデザインはビジネスパーソンの頼れる相棒だ。
ロイヤル コペンハーゲンはデンマークの王立製陶所として1775年に創業した。以来、現在までこの国の王室御用達のテーブルウェアブランドであり、北欧のものづくりの代名詞であり続けている。熟練の手仕事による高度なクオリティと、長い歴史に裏づけられた気高さは、時代に左右されない価値をもつものだ。
ただしロイヤル コペンハーゲンは、常に新しいデザインに取り組むブランドでもある。その伝統の延長線上に名作と呼ぶべきものをいくつも生み出してきた。なかでも近年、最もエポックメイキングなシリーズは「HAV」(ハウ)に違いない。建築事務所「BIG」を率いるデンマークの著名建築家、ビャルケ・インゲルスらによるデザインチーム「KiBiSi」(キビシ)を起用し、ハウが発表されたのは約2年前。それはブルーの花柄で彩られたロイヤル コペンハーゲンのイメージを一新する、きわめて大胆なものだった。
KiBiSi(キビシ)
デンマーク生まれの3人が2009年にスタートしたデザイン・ユニット。家具、日用品、電気製品など、各々の持ち味を活かした幅広いデザインを手がける。
キビシの3人がハウをつくる過程でインスピレーションを得たものに、デンマーク北西部のコールド・ハワイと呼ばれるコミュニティがある。北欧有数のサーフスポットだが、その名の通り温暖な場所ではない。都会に住む人も、ここでは波とひとつになり、ありのままの自分に還っていく。海で冷えた身体を温めてくれるのは、仲間たちと囲む食事だ。シンプルゆえに本質的なライフスタイルは、現代における真のラグジュアリーと言えるのではないだろうか。ハウは、そんなシーンにふさわしいテーブルウェアとして発想された。
一連の器に用いられたグレイッシュなブルーは、まさに北欧の海の色そのものだ。職人が2種類の釉薬を吹き付け、焼成の過程で釉薬が混じり合い、独特の色彩をつくり出していく。波打つ海面にも、魚の鱗のようにも見えるレリーフは、1892年に発表された歴史的コレクション「シーガル」のパターンを参照した。
今年、ハウに新しく加わったジャグに象徴される、自然の造形を思わせるフォルムも印象深い。このジャグは、以前からラインアップされていたカラフェを小ぶりにしたような形をしている。カラフェは、海面から飛び立つ白鳥の胸をイメージして、首元から徐々に色が薄くなるグラデーションを施していた。新作のジャグはそれとは逆に、底から上に向かってのグラデーションが美しい。ダークブルーの水面に降り立つ白鳥を連想せずにはいられない。
またプレートには、いままでよりもひと回り小さく、使い勝手に優れた直径17㎝のタイプが加わった。既存のプレートと重ねると、まるで波紋のようなパターンが生まれる。ジャグやカラフェと組み合わせることで、テーブルの上に静かなストーリーが展開していく。
これまでのロイヤル コペンハーゲンの世界観を一新する、ハウがつくり出す澄みきった風景。ただしブランドに受け継がれるクオリティと気高さに、妥協はない。これは豊かな伝統から生まれた現代の器なのだ。
今秋、発表されるロイヤル コペンハーゲンの新作を手がけるのはガムフラテージ。そのモチーフと、発想のルーツをたどる。
伝統的なパターンに、新しい生命を吹き込む
ガムフラテージは、いま人気が急上昇しているコペンハーゲンのデザイン・デュオだ。それぞれの出身国であるデンマークとイタリアの感性を融合させ、さらにオリジナリティを確立した作風がジャンルを超えて評価されている。たとえば2019年発表の「ブルーミスト」は、彼らが手がけたパリの北欧レストランのためのテーブルウェアで、ブルーと白い素地のコントラストが鮮やかだ。
ふたりは21年秋の発表に向けて、ロイヤル コペンハーゲンと新しいプロジェクトを進めている。「ロイヤル クリーチャー」と名付けられるこのシリーズは、海中、水辺、その周辺という3つの場所に棲む生き物がモチーフ。クラシックな印象の「プリンセス」シリーズをベースに、その表面を魚、虫、水棲生物などの姿で彩る。この絵柄は、ロイヤル コペンハーゲンが創業時から用いてきたブルーフルーテッドのパターンを分解し、再構成して描かれるという。ブルーフルーテッドはこのブランドのデコレーション番号「No.1」であり、200年以上の歴史を象徴する絵柄だ。
簡潔で洗練されたイメージのあるガムフラテージだが、ふたりは遊び心を大切にするデザイナーでもある。ロイヤル クリーチャーは、意外性あふれる着想に基づき、伝統的な絵柄から新しい魅力を引き出す試みだ。ハウに引けを取らない斬新さをもつ一方で、ロイヤル コペンハーゲンのベーシックな器とも見事な調和を見せる。
ブランドの新たな歴史を刻む、次なるプロジェクトの全貌が明らかになるのを楽しみに待ちたい。