名門時計ブランド「A.ランゲ&ゾーネ」の秘史が込められた、ウォルター・ランゲ追悼モデルとは。
A.ランゲ&ゾーネは1845年に創業したドイツの名門ブランドですが、第二次世界大戦後に東ドイツの国営企業が接収。栄誉あるブランド名が一度は歴史から消えました。それが劇的に復活したのは、東西ドイツが統合した1990年の12月。4代目にあたるウォルター・ランゲによって商号などが登記され、再興への道を歩み始めたのです。当時はIWC社長だった故ギュンター・ブルムラインの協力を得て、94年にはオフセンターの時分計に大型分割式日付け表示などを備えた画期的な「ランゲ1」など4コレクションを発表しています。
このように新生ランゲの成功に尽力したウォルター・ランゲの訃報が届いたのは、国際的な高級腕時計展示会「SIHH 2017」の期間中でした。時計界を深い悲しみが覆ってから約1年。「SIHH 2018」が開催される直前の12月に、彼の功績をたたえた記念限定モデル「1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”」が発表されました。ベースとなった「1815」は創業者の生誕年にちなんだネーミングから連想されるように、懐中時計の伝統的な要素と意匠を継承したモデルです。
さらに、通常の機械式時計は秒針がチチチと小刻みに進みますが、このモデルのセンター秒針は1秒ごとにジャンプします。ダイヤル外周にあるレイルウェイモチーフの目盛りを長い針が正確にたどっていくので、秒という時間の最小単位の経過を読み取りやすいのです。2時位置のボタンのワンプッシュで、センター秒針をストップ・スタートできるほか、6時位置には通常の運針のスモールセコンドも設定されています。
この「ジャンピングセコンド」=「ステップ運針式秒単位ムーブメント」と呼ばれる複雑機構は、創業者のフェルディナント・アドルフ・ランゲが1867年に発明。長男のリヒャルトが発展させて77年にドイツ初の特許を取得。これを実用化した懐中時計を製作したのが、次男のエミールです。当時からスモールセコンドも設定されていました。いわばランゲ一族の歴史が込められた独自のメカニズムが腕時計として復活。創業者の生誕年を命名されたクラシカルなモデルに搭載されたことになります。さまざまな意味を重ねもつ、故ウォルター・ランゲを追悼するにふさわしいモデルといえるでしょう。
こうした歴史を踏まえて、ケースによって製作本数が異なる限定モデルになっています。 18Kホワイトゴールドは145本(創業から再興された日までの年数)、18Kピンクゴールドは90本(再興されたのは1990年)、また18Kイエローゴールドは27本(再興された日から2017年12月までの年数)。
また、A.ランゲ&ゾーネでは最上級の一部モデルにしか採用されていないステンレススチールをケースにした1本だけの特別限定モデルも製作されます。ダイヤルも美しく艶光りするブラックエナメル。2018年に開催されるオークションに出品され、その収益は慈善活動に寄付される予定です。
問い合わせ先/A.ランゲ&ゾーネ TEL:03-4461-8080