東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第33回 Bentley Bentayga / ベントレー ベンテイガ
パラドクスこそ高級車の証。「ベントレー ベンテイガ」でベルトリッチの夢を見る!?
ベントレー初のSUVということで、乗るのを非常に楽しみにしていたベンテイガ。もう絶対「悪いはずがない」という確信があったんだ。というのも、「SUV」と「超」のつく高級車の相性は最高だからなんだよね。でも一般的なSUVの売りになるオフロード性能はひとまず置いておこう。たとえばベルトリッチの『シェルタリングスカイ』みたいに暇にこと欠いた富裕層が、ベンテイガのような超高級車で極地を目指すというのはあまり想像したくないもんね(笑)。ともかく! ベンテイガへの興味は車型を変えることで、どこまで高級性能を突き詰められたかというところに尽きる。うん。ここにベントレーをはじめとしてジャガーやマセラティ、ロールスロイスまでもがSUVに手を伸ばしてきた理由がある。
SUVは純然と走りのラグジュアリティを高めるんだ。それは軽くしようのない、その自重に関係がある。たとえば自重10トンに積載13トン積んだ大型トラックを想像して欲しい。合計23トンの大型トラック(四軸のエアサス付)はその車体重両で路面からの入力をならしながら走るから、それこそ大型クルーザーのような乗り心地になる。でも乗り心地だけでは高級性能としては未完成で、その重い車両重量を思いのままに操れる強心臓が必要になるんだ。ベンテイガは乗用車最高クラスの自重2.5トンに対して、3リッターのV型6気筒を2台配置したW12気筒エンジンを搭載していて馬力は600越え、トルクにいたっては900ニュートンにも達する。
その走りたるや王侯の宮殿が宇宙空間を突き進むような異次元の走り! この重い物体が「まるで重さを感じさせないように走ること」こそが真の高級性能なんだ。普段は海原を航行する客船のごとく、エンジンの音も乗り心地も静穏そのものなんだけど、ひとたびアクセルを踏めばW型12気筒エンジンが唸りをあげる。その高回転域のとてもレーシーな音には驚かされるし、一気呵成で圧倒的な加速感は身の毛がよだつって感じ(笑)。SUVだからといって、スピードへの飽くなき欲求を埋もれさせないところがベントレーだね。その静けさと躍動感のハーモニーには、ものすごく繊細な調律がなされていて、水滴が表面張力でバランスを取ってると思えるほどだった。
あとこの乗り味は、サルーンならともかくSUVの高い視座で体験するといっそう非日常的っていうのもある。深いストロークのサスペンションが懐の深い乗り心地をもたらしてるっていうのもあるよね。だから「高級車がSUVにならない理由は全くない」と思ったな。実際、次のベンテイガはさらに「車体を大きく重くして、エンジン出力も大きくして欲しい」と思ったよね(笑)。あははは。ま、よく考えればそういうパラドクスこそが高級車の証だし、結果オフロード性能も極めて「アフリカの荒野をベンテイガで冒険したい」って気持ちにもさせられるのかも。ここにいたって初めて『シェルタリングスカイ』の狂気も、分かる気がするっていうかね(笑)。
●エンジン:6.0リッターW型12気筒ツインターボTSI
●最高出力:608PS
●最高トルク:900Nm
●トランスミッション:8速AT
●車両価格:¥27,390,000~