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手を動かして気付く、発見から始まるデザイン
安価で耐久性の高い建材として、さまざまに用いられる塩化ビニル管。プロダクト・デザイナーの岩元航大は、この素材の可塑性に注目し、吹きガラスの手法でパイプを個性豊かな花器に変えた。見慣れた素材に新しい表情を与え、今年のミラノ・デザインウィークで大きな話題を集めた作品だ。
「小さな頃からモノづくりが好きでした」という岩元。祖父が漁師で、漁師網を編むのを手伝い、ガレージにある工具を遊び道具にして育った。そしてプロダクト・デザインを学ぶために神戸芸術工科大学へ進学。在学中に学生と教員によるプロジェクト「デザイン・ソイル」に参加した。
大学3年生の春に同プロジェクトがミラノ・サローネに出展、岩元の作品がそのひとつに選ばれ、初めてミラノに。そこでデザイナーや企業が本気で挑む姿に感動する一方、同世代の学生が発表する作品の質に圧倒された。
「スイスのローザンヌ美術大学の展示を見て、同じ土俵に立てていないと焦りを感じました。けれど同時に興奮もやまなかったんです」
このことをきっかけに岩元はローザンヌ美術大学の大学院へ進学。そこではとにかく手を動かし、質を高めることを叩き込まれたという。2016年に帰国しフリーランスで活動を始めるが、17年に商品化された『ベントスツール』も在学中に発見したアイデアをもとにしたもの。座面となるパイプが熱で溶けたようにもう一方のコの字型パイプに沿って潰れ、互いを支えるようにして成立するスツールだ。
「金属パイプをベンダーで曲げる際に、2本のパイプがベンダーに噛み付いて外れなくなってしまって。失敗ですが、このエラーから生まれた面白さを活かしたいと考えたのです」
塩化ビニル管の花器も、プロトタイプをつくろうと素材を熱するうちにひらめきを得たという。「商品化されるデザインと並行しながら、自分の手で加工できるものをつくりたいという思いはいまも変わりません。そしてそれを、将来的には自らの手で販売していきたいんです」
岩元は鹿児島に工房を構え、東京との往復を続ける。ガレージでモノづくりの面白さを知った彼の本質は変わらない。手を動かしその気付きをデザインに発展させる過程は、どこか現代デザインの祖であるバウハウスをも思わせる。岩元の次なるアイデアは、その手だけが知っている。サイトはこちらから→www.kohdaiiwamoto.com
個性豊かな花器「プラスティック・ブロイング」。塩化ビニル管という身近で安価な素材を吹きガラスの手法で形成した。
2017年のグループ展での会場風景。写真左の、極細のステンレス繊維でできたシェード「クォーツ・ランプ」を発表。photo:Satoshi Watanabe