東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第88回 BMW M850i xDRIVE COUPE / BMW M850i エックスドライブ クーペ
マルホランドを狙い撃て⁉ 新生8シリーズは、「クーペのBMW」の威信をかけた勝負作。
新型車ラッシュのBMWにあって、Z4とともに気になって仕方がなかったのが、19年ぶりの8シリーズの復活。初代はリトラクタブルヘッドライトにBMW初のV12エンジンを搭載した大型クーペという、おおよそBMWらしからぬプロダクトだったのね。先代は10年もしないで生産終了。この美しくも特異なキャラクターに惹かれて何度も中古の購入を検討した車種だけど、トランクルームが狭すぎるとか、V12エンジンが大きすぎてエンジンを下ろさないと整備ができないとか(笑)、いろんな噂があって断念したわけ。
BMWが満を持して贈る、大型クーペの旗艦モデル
BMWは高級大型クーペ市場に再び、この新生8シリーズを復活させた。先行する6シリーズの後継ではあるものの、8シリーズの復活は「クーペのBMW」の意地に他ならないと思う。実際その姿は、しびれるほどカッコいい。全長5m近い巨体でロー&ワイドなロングノーズ、そして2ドアクーペらしい美しいルーフラインをアピールした車型は、BMWらしさと大型クーペに求められるデザインの理想的な着地点を見出している。主戦場は北米だから、かの地でいかにアピールするかを考え尽くしたデザインとも言え、ハリウッド映画よろしく明快にマッシブ、かつラグジュアリーな“マルホランド感”の高いBMWだよね(笑)。
新生8シリーズは、並みいるライバルに対して挑戦者のポジションをとってきた。ただそこは30年前の轍を踏まないというか、いたずらにキャラクターを際立たせることなく、市場が求めている大型クーペのツボを抑えている。まずクルージングポジションで、ゆったりとV8エンジンのハミングに身を任せられる至福の大型クーペであること。次に内装も、わかりやすくゴージャスであること。この点はデヴィッド・リンチの映画でも知られるセレブの通勤コース、マルホランドドライブにもお似合いって感じだね(笑)。
ドライブモードも最近のBMWには必ずついてくる、エコプロとアダプティブがこの8シリーズでも相性抜群なんだ。エコプロは、ちょっとアクセルを踏むとギアをニュートラルにして惰性走行する、経験豊富なプロドライバーみたいで、そのスムーズで優しいシフトさばきが病み付きになる。