燻製サバが鎮座するポテサラは、日本酒と合わせることで味...
写真:尾鷲陽介 文:岡野孝次

燻製サバが鎮座するポテサラは、日本酒と合わせることで味わいが完成する。

松濤 燗缶
神泉
酒飲みに嬉しいメニューをおまかせで提供
蔵元ゆかりの日本酒を揃える
広々としたカウンターで独酌も歓迎

「燻製サバのポテサラ」1人前 ¥400(税込)。ジャガイモ、キュウリ、タマネギのシンプルな具材に、自家製ガリとゆかりを合わせてマヨネーズで合える。酸味の印象的なしょうゆドレッシングも利かせる。自家製の燻製サバからは、適度な塩味と苦味も。日本酒は米の旨みの強い生酛と合わせるのがおすすめ。日本酒は半合¥500〜。

『ミシュランガイド東京』ビブグルマン常連の居酒屋、渋谷「高太郎」。その立ち上げから9年の時を経て独立した柿木信浩さんが、2020年5月に開業したのが「松濤 燗缶(ランプ)」。高太郎と同様、料理はおまかせ、飲み物は日本酒が中心だが、異なるのは品書きがなく、またナチュラルワインを取り揃えることだ。「お客さまの細かな好みにお応えしたいから、いまはおまかせ一本。また日本酒と同じく食中酒であるワインを置いて、多彩なマリアージュを提案します」と柿木さん。

燗缶の魅力を知ってもらうべく、一見のお客にほぼ必ず提供するのが「燻製サバのポテサラ」「肉団子」「〆鯵のテリーヌ」。なかでもポテサラは、やはり酒好きにはグッとくるようで評判の一品だ。自家製ガリ、赤シソゆかりなどが入った酸味の利いたポテサラと、脂ののった塩味の薫製サバを合わせて、温燗の生酛(きもと)をグッと煽ればふくよかな米の旨みと甘みが広がっていく。「口内で五味がまとまるように、料理とお酒を提案します」。ワインなら、果実味の凝縮感が際立つ軽めのガメイが合うそうだ。

またワインを選択肢に加えたことで、たとえば魚はセビーチェ(南米風の魚介マリネ)に仕立てるなど、調理の幅が広がったと柿木さん。稀少なサドルバック豚が入荷すればシンプルに塩コショウで焼いて提供、これが日本酒にも抜群に合うのだから、開業早々すでに人気店、左党の信頼が厚いのも納得できるのだ。

渋谷駅からは「東急百貨店 渋谷本店」前の道玄坂二丁目交差点へ向かい、松涛文化村ストリートを山手通り方面に進んだ途中に立地する。神泉駅からの方がアクセスしやすい。周辺は日本酒居酒屋、ビストロ、ワインバーが密集するエリア。

通りから階段をちょこっと下りる、まるで半地下にあるような店舗で、静かで落ち着いた空間。一枚板のカウンターは目にも心地いい。右手、カウンター席の後ろには立ち飲みカウンターも用意。「足元にコンセントがありWi-Fiも飛んでいるので、将来的には仕事しながら気軽に飲める場所にしたいんです」と柿木さんは話す。

燻製サバが鎮座するポテサラは、日本酒と合わせることで味...