世界的なロゼブーム! 飲むべき日本産はこれ。
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鹿取みゆき・選&文  尾鷲陽介・写真

世界的なロゼブーム! 飲むべき日本産はこれ。

龍之介2018 あいざわ農園

世界的に人気急上昇中のロゼワイン。いまやパリでは、白よりもロゼのほうが人気が高いそうです。日本でも、今年になってにわかにロゼの注目度が上がってきました。今回、ご紹介するのは「龍之介」というロゼワイン。前回に引き続き、またまた希少な山幸というブドウ品種を使っています。

一口飲んでみて、その愛らしい味わいに魅了されました。ラズベリーに続いて、スパイスの香りが立ち上ってきます。僅かにガスを含んでおり、フレッシュで瑞々しさがいっぱいです。あまりの飲み心地のよさに、ついゴクゴクと飲み干して、グラスが次々と空になってしまいました。

つくり手は、北海道の帯広市にあるあいざわ農園の相澤一郎さん。ブドウを育てるだけでなくワインもつくってみようと思った相澤さんは、色々なワインを意識して飲むようになります。そして出合ったのがあるロゼワイン。身体に染み込むようなその味わいは、かつて経験したこともないものでした(なんと相澤さんは一人で僅か20分ほどでボトルを空にしてしまったとか)。

「こんなワインをつくってみたい!」と、そのロゼワインのつくり手である北海道のブルース・ガットラヴさんにノウハウを訊ね、自らもつくり始めました。収穫したブドウは、まずは畑で徹底的に選果。その後、房のままタンクに入れて蓋をし、ワイナリーの外に置いておきます。培養酵母は加えません。収穫は10月の中旬で、昼こそ気温は15度まで上がりますが、夜は5度まで冷え込みます。北海道の冷気の中、ブドウの細胞中では、ゆっくりゆっくりと発酵が始まっていきます。見守ること40日間。その間にやることは、好ましくない菌が働かないようにドライアイスを毎日振りかけるだけ。果皮を砕いたり、上から押したりと、人為的に色やタンニンを抽出することはしていません。その後、もろみを搾ったら、今度はタンクで発酵させ、古い樽で熟成させるのです。香ばしさとえぐみのない酸、果実味とが一体になった、生き生きとした味わいはこうしたつくりによるものです。

もうひとつ、このワインの特筆すべき点は、ブドウが完全な無農薬で育てられていること。もともと、山ブドウが好きだった相澤さんのお父さんは、山林だった土地を手に入れて、その真ん中にブドウ園を拓きました。そこはいままで一度も農薬が撒かれたことのない土地で、たとえ山ブドウを育てるとしても、農薬を撒くまいと、農薬を使わずにブドウを育てているそうです。蒸し暑い夜にぴったりの瑞々しいロゼワイン、軽く冷やしてぜひお試しを。

ロゼワインといっても、色味は赤紫色。やや濃い目の色合いです。40日間静置させているあいだ、香りがコロコロと変わり、相澤さんは気が気じゃなかったそうですが、最後には自分の思うようなワインができたと言います。亜硫酸を加えたのは瓶詰時のみ。その量も僅か15ppm。

山幸はアムレンシスというヤマブドウと清美を掛け合わせて開発された品種。耐寒性があるため、マイナス30度まで下がる厳寒の地でも土の中に埋めずに越冬が可能です。相澤さんは岩見沢市にある「10Rワイナリー」で3年間のワインづくりの経験を経て、今年いよいよ自身のワイナリーを帯広でスタートさせます。


自社管理面積/約5.5ha
栽培醸造家名/相澤一郎
品種と産地/ヤマブドウ、山幸、清舞、その他交配品種・北海道帯広市以平町
ワインの容量/750ml
価格/¥3,240(税込)
つくり/房のままタンクに投入し40日間低温で静置後、搾汁 。30日間ステンレスタンクで発酵を続けさせる。その後、古樽で6カ月の熟成後、無濾過、ただし粗い澱後、瓶詰め(瓶詰め時のみトータルSO2、15ppm)無補糖、無補酸
栽培/無農薬。ブドウ園の周りは雑木林が取り囲んでいる。
https://aizawanouen.com

※この連載における自然派ワインの定義については、初回の最下段の「ワインは、自然派。について」に記載しています。さらに毎回極力、栽培・醸造についての情報を開示していきます。         


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