フランス人が日本酒をつくるとこうなる⁉「昇涙酒造」の純米酒は、ワインに匹敵するしっかりボディ
2017年、海外で初めて本格的な酒蔵がスタートしました。日本醸造組合から正式に「きょうかい酵母」の使用を認可された、フランス南東部 ローヌ・アルプ地域の「昇涙酒造(Les larmes du levant)」です。その日本酒がいよいよ日本にも上陸。蔵元のグレゴワール(グレッグ)・ブッフは、13年に初めて来日した際、日本酒の虜になり、自国での日本酒づくりを志すようになりました。その後、鳥取の梅津酒造で1年間修業。日本文化を深く体験しながら、酒づくりの工程や蔵元としての心得を学びました。
その後帰国し、「竹鶴」などで酒づくりに携わっていた若山健一郎を杜氏に迎え、さらに花垣で有名な福井県の酒蔵、南部酒造の蔵人だった田中光平を加えた日仏3人組で日本酒を醸し始めます。フランスには精米設備がないため、酒米は日本で精米してからトン単位で輸入。仕込み水は地元ピラ山の湧き水、醸造に使う道具は日本から持ち帰ったものとフランスでリメイクしたものの和洋折衷です。16年にローヌ・アルプ地方、サンテティエンヌ近郊の小さな街ペリュサンで酒造会社を設立。最初の酒を搾ってから2年を経て、ようやく今春、日本での輸入・販売をスタートさせました。
フランス人の蔵元が注目する、
「燗酒」という文化。
「日本酒はフルーティな酒だけでなく、料理を引き立てる幅のある味わいがあり、明確なアイデンティティがある。そんな多様性を含めて、もっと世界にその魅力を知ってほしい」と話すブッフ。日本でいま流行っている華やかで香り立つ醸しではなく、伝統的手法と精神で日本酒本来の旨味を引き出しています。ほどよく熟成されたそれらの酒は燗酒にも向いており、燗にすることで新たな魅力を放ち、ペアリングの可能性も広がります。
「冷酒から燗酒まで、ひとつの酒でも5種類の温度帯で飲めば味わいも変わり、想像を超えた多様性が生まれます。それがワインにはない日本酒の素晴らしさ。食中酒としてのポテンシャルも高い」。ワインの国に生まれた彼が、日本酒に日本の文化や風土を感じ、「燗酒」という文化を大切に守ろうとしています。
ワインに匹敵するボディと味わい、
そして余韻の心地よさ。
昇涙酒造でつくっている日本酒は、全5種類。たとえばその中の1本「雷(Le Tonnerre)」は、鳥取産の玉栄80%精米を使用。美しい琥珀色をしており、芳醇で複雑な香りの中にしっかりとした酸味があります。ドライアプリコットのような落ち着いたフルーツ香の中にうっすらと白米の香り、バジルやローズマリーを思わせるハーブ香も重なります。燗映えのする酒で、温めると酸味が心地よく、口当たりが一層ソフトになって、ミルキーな印象が強調されます。他にも、日本酒を初めて飲む人でも親しみやすい純米酒「暁」、純米吟醸酒の「風」、フルボディの純米酒「浪」、そして日本限定でつくられた、初めての生酛づくりである「一心」というラインアップです。いずれも純米酒で、ワインに匹敵するボディと幅のある味わいを持ち、繊細さと肌理の細かさ、心地よい余韻が特徴的です。
これからさらにグレードアップさせて、「蔵の味」を生み出していきたいと話すブッフ。フランスから‟逆輸入”された日本酒文化の新たな魅力に、身を委ねてみてはいかがでしょう。
問い合わせ先/酒のはしもと
千葉県船橋市習志野台4-7-11
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