極上の江戸前うなぎを満喫できる、都内の厳選4軒。

極上の江戸前うなぎを満喫できる、都内の厳選4軒。

写真:長谷川 潤 文:小松めぐみ(明神下 神田川本店、うなぎ時任、鈴木)、森脇慶子(鰻 蒲焼 駒形 前川)

2018年10月、紆余曲折を経て豊洲市場が開場しました。江戸時代初期に誕生した日本橋魚市から始まった魚河岸のシステムは、「江戸前」というブランドを生み、いまここに引き継がれようとしています。元来は「うなぎ」を意味したと言われている「江戸前」。ここでは極上の江戸前うなぎを食べられる名高い老舗と、新たなスタイルの注目店を紹介します。


風格ある座敷で、秘伝のタレが染みた変わらぬ味を。

タレを纏ったやや硬めのご飯に、やわらかな蒲焼きをのせた「うな重」。新香付き¥3,996~。吸物または赤出汁は¥648。コースは6品¥10,455と8品¥12,300の2種。※価格はすべて税込

黒塀に囲まれた木造一軒家は、まるで料亭のよう。広々とした個室の座敷で年代物の調度品を眺めながら「うな重」を待てば、店の歴史に興味を抱かずにはいられません。

「明神下 神田川本店」のうなぎは注文後に蒸し始めるため、待つこと20分ほど。その間に11代目店主の神田茂さんに由来を尋ねれば、初代は江戸幕府の賄い方を務めていた人物。幕末に武家株を売り、流行りの蒲焼きを売る屋台を始めたのが最初で、当初の屋号は「深川屋」だったといいます。場所は万世橋付近でしたが、店名を改め明神下に移ったのは明治3(1870)年。蒲焼きのタレは、継ぎ足し継ぎ足し当時から使われているもの。

 「タレはうなぎ屋の命ですからね。戦時中は人より先に疎開させたと聞いています」

うな重は、すっきりした甘辛さも、蒲焼きのやわらかさも、正統派の関東風。材料も製法も道具も、なるべく昔のままです。

「いまは竹串も団扇も炭もいいものが手に入りにくいので、きつい部分はありますけど、踏ん張っています。変えることはできますが、私はこの味を残したいんです」

老舗を守る店主の矜持が、心に沁みます。

煉瓦製の火鉢をおいた厨房の一角。他の店ではあまり見かけない、両サイドから焼ける火鉢だ。

雪見障子を配した2階の座敷個室は、1952年から変わらぬ内装。1階にテーブルの個室も。全席個室の7室。

文化2(1805)年に創業。昌平橋通り沿いの木造一軒家は、前栽の古木の枝ぶりにも風格が漂う。

明神下 神田川本店

東京都千代田区外神田2-5-11 

TEL:03-3251-5031 

営業時間:11時30分~14時30分、17時~21時30分 

定休日:日、月、祝

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