テレワークの集中力アップの秘訣は、ベランダでのコーヒーブレイク
ヴァンサン・ロサンは、デザイン学校で修士学生を指導する教員。リラ・ドゥノワイエルはベトナムで製作する雑貨のデザイナー。それまでテレワークとは一切無縁だったふたりは、ロックダウンを機に、在宅勤務を開始した。
ヴァンサンは、ビデオ会議で、同僚の指導教員とともに、学生一人、あるいは数人のチームの作品制作を指導。9時から19時まで、時には6、7時間ぶっ続けで代わる代わる学生と面談することもあった。ビデオ会議に生活臭を持ち込まないために、仕事場はリビングに置き、暖炉と鏡を背景に。
「物理的な距離とは逆に、学生と近くなり、プライベートな会話が増えた。コミュニケーションが深まった」というヴァンサン。秋から学校は再開したが、テレワークで馴染んだツールやビデオ面談は、研修や留学で対面できない学生の指導に活用するつもりだ。
一方、リラは、寝室の一角につくり付けたデスクが定位置。頭上の書棚にもデザイン関連本が並ぶ。もともと週休3日の契約。4日間は会社で働き、出番のないデスクは物置き台になっていたとか。
「ロックダウン中は販売やマーケティング部門が休業。他の部署とのやりとりがなくなって、自分本来の仕事であるクリエイションに集中できた」
この体験から、ロックダウン解除後は週1日をテレワークに充てることにした。週3日の出社日は他部署とのコミュニケーションやアシスタントとの協働に。テレワーク日はベトナムのスタッフとビデオ会議をする以外は、リサーチやデザインなど、クリエイションに専念する。仕事開始は、「メトロに乗り込むのと同じ、8時40分」。集中するためのテレワークだから、ランチを忘れて没頭することも多いが、それは週1日だからこそ。このリズムが、彼女の理想だという。
ヴァンサンは手持ちの素材で窓辺に組み立て式のテーブルをつくった。天気がいい時には、必ずここでランチタイムを過ごす。学生との面談の合間のコーヒーブレイクに窓辺のスペースは気分転換に大いに役立つ場所。ロックダウン中にパリジャンが熱望したのは、広い空間と緑だった。リラがテレワークを始めたことで、ふたりのライフスタイルにも、変化の可能性が見えてきた、とロサンは言う。
「月曜から水曜はオフィスへ。でも木曜日はパリのアパルトマン以外の場所でもテレワークはできる」とリラ。いま、ふたりはパリから1、2時間の交通の便のよい場所にセカンドハウスをもつことを考えている。