隈研吾が初めて手がけた、家電量販店の全貌とは。
SÃO PAULO サンパウロ

隈研吾が初めて手がけた、家電量販店の全貌とは。

写真・文:仁尾帯刀

隈研吾が開発した三軸織物による空間装飾「CLOUD」は、唯一日本から持ち込んだ素材。照明周りに配することで、光の濃淡と軽やかさを演出。

サンパウロで隈研吾建築都市設計事務所が改装を手がけた家電量販店が新装開店し、国内主要メディアも取り上げるなど話題だ。

「ファストショップ」はブラジル各地に89店舗を構える高級家電量販店。1996年にショッピングセンター内に開店した1号店が、昨年11月にリニューアルされたのだ。隈研吾にとって、家電量販店を手がけるのは初。生活空間の提案を軸にした新たなコンセプトにより、970㎡の店舗は7部門に分けられ、その空間の設計と装飾が隈に委ねられた。

各部門で目を引くのが、異なる照明の装飾だ。「ニュース部門の照明の装飾は、三方向のポリエステル繊維を60度で交叉させた織物で、折り曲げた形状を保ってくれます」と隈研吾建築都市設計事務所ブラジル担当室長にしてファストショップ建築部部長の藤井勇人さんが店内を案内してくれた。「ブラジル人からの一番人気は、キッチン商品を扱った部門です」。照明の装飾には波打つ複数のすだれが用いられ、消費者が空間をイメージできるよう、大手メーカー3社の冷蔵庫、調理台などの商品が、3つのモデルルームのように配置されている。

竹ひごのすだれを照明の装飾に用いて、和の居心地とアイディアを演出したキッチン部門。

サンパウロでの隈の認知度は、2017年にパウリスタ大通りにオープンした日本文化の発信拠点「ジャパンハウス」を手掛けたことで一躍高まった。だが、日系2世のファストショップ会長ミルトン・カクモトさんは、1995年頃から隈の建築に注目していたという。

「店舗には多くの和の要素が用いられていますが、その素材のほとんどはブラジルで作られました。隈研吾のデザインとブラジル人職人とのシナジーがこの空間をもたらしたのです」とカクモト氏。

隈によるファストショップ改装第2段は、リオデジャネイロ市のバーハ・ショッピング内店舗で、2022年に予定されている。ブラジル二大都市で発信する隈建築の魅力が、今後どのように国内に伝播されていくのか注目したい。

藤井勇人さん(右)と店舗マネージャーのジエゴ・フレイレ・デ・ソウザさん(左)。「新たな営業コンセプトを学んだスタッフ65人は、新装店舗での業務にプライドを携えて臨んでいます」とソウザさん。

ブラジル製の和紙を使用した照明。

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