大御所デザイナーの手で、スキポール空港のベンチが世界初...
AMSTERDAM アムステルダム

大御所デザイナーの手で、スキポール空港のベンチが世界初のサステイナブル仕様に!

文:ユイキヨミ

フレームのアルミニウムは、旧型のものを溶かして再利用。修理やメンテナンスをしやすくするため、すべてのパーツはネジで固定する。台座は、革の端材を再生した新素材。クッションには生物分解する自然素材のラテックスなどが使用されている。photo: Courtesy of Richard Hutten Studio

1991年のデビュー以来、第一線で活躍し続ける大御所デザイナー、リチャード・ハッテン。近年では、「プラスチック・フリー・デザイナー」宣言をするなど、サステイナビリティに軸においた活動を展開している。

そんなハッテンの最新作が、スキポール空港ロビーに設置されたベンチ「Blink(ブリンク)」だ。オランダの家具メーカーLensvelt(レンスフェルト)製で、空港の公共施設家具としては、世界初のサーキュラー・プロダクトとなる。

2030年までにゼロ・ウェイストの実現を目指すスキポール空港は、今回の公共施設家具のリニューアルにあたり、極めて高い耐久性と、妥協のないサステイナビリティを求めた。これを受けたハッテンは、デザインだけではなく、使用後の最終処分に至るまでのプロダクトの一生を徹底的に吟味。製造や輸送によるCO2排出量カットにも注力し、既存の同様のプロダクトと比較すると約95%減という快挙を達成した。ベンチの全パーツは空港から75km以内の製造者から調達し、「地産地消」も実現している。

「これからのデザイナーは、“ゆりかごからゆりかごへ”をデザインの基本必須要項と考えるべき。同時に、莫大なCO2排出量で地球に負荷を与える製造業界には、徹底改革が必要!」

こう熱く語るハッテンは、Blinkなどの作品を通して、業界内部からのパラダイム・シフトを企てている。

現代の必須アイテムであるコンセントは、各座席の下に設置されている。「Blink製造のためのイニシャルコストは通常の1〜2割増し。だが耐久年数やメンテナンスの経費を考えれば最終的には断然割安。プロダクトの価格は長期的に判断するべき」とハッテン。photo: Courtesy of Richard Hutten Studio

リチャード・ハッテンは、デザインアカデミーの卒業制作としてデザインしたテーブル・チェア(写真)でデビュー。オランダのデザインムーブメント「ドローグ・デザイン」の旗手としても知られる。www.richardhutten.com photo: Kiyomi Yui

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