シャボン玉の向こうに何かが見える! 銀座メゾンエルメスのウィンドーの秘密をデザイナーに聞きました。
ショーウィンドーに浮かぶいくつものシャボン玉。その向こう側に姿を現すのは? 現在、銀座メゾンエルメスのウィンドーを、ウィーンを拠点に活躍する2人のデザイナー・ユニット「ミシェール’トラクスラー」の「バブル・ボヤージュ」が飾っています。彼らは日本ではまだあまり知られていませんが、ヨーロッパのデザインシーンでは多方面から注目される存在。多様なテクノロジーや「動き」などの要素を巧みに取り込みながら、見る人の気持ちを心地よく揺さぶるところが、そのもち味です。「演じる。遊ぶ。プレイフルな人生!」をテーマとする今年のエルメスに、彼らの作風は見事にフィットしています。
ミシェール’トラクスラーが今回のウィンドーディスプレイを発想する原点には、エルメスから提案された「レッツ・プレイ!」というテーマがありました。その経緯をトラクスラーが説明します。
「このテーマをもとにふたりでブレインストーミングをしていて、ハイド&シーク(かくれんぼ)という言葉が浮かんできました。ショーウィンドーの中で、隠れているなにかを見つけるようなものをデザインしたいと思ったのです」
ハイド&シークのアイデアを実現しようとリサーチをする中で、彼らが出合ったのが液晶ディスプレイと偏光フィルターの関係でした。我々が日常目にしているディスプレイは、白く光って見えるだけのディスプレイに、偏光フィルターを重ねることで画像を映し出しているのです。あるコンピューターのマニアが、その仕組みをYouTubeで紹介していたと言います。
「とても単純でアナログとも言えるテクノロジーだけど、不思議な効果を生み出すことができます。もっとアーティスティックに表現したら、きっと面白くなると思いました」
彼らは、スタジオで古いディスプレイを使って実験を行い、そのアイデアをストーリーのある映像と結びつけることにしました。そして偏光フィルターを、シャボン玉に見立てようと考えたのです。
「道を歩く人に伝わりやすく、説明的になりすぎず、プレイというテーマに合うものとして、シャボン玉のアイデアにたどり着きました。誰もが外に出かけたくなる春のイメージにも合いますよね」とミシェール。ディスプレイの周囲にはエルメスの製品をあしらい、各アイテムと関連したユーモアのあるアニメーションを用意しました。
ショーウィンドーは、歩く人が思わず目を止めるインパクトがあり、じっくりと見たくなる魅力があり、さらにブランドの世界観を伝える深みを備えていることが理想です。ミシェール’トラクスラーの「バブル・ボヤージュ」は、その理想形にとても近いものになりました。