オランダ広告史上に残る傑作を多数生んだ、「ケッセルスクラーマー」の軌跡
業界の常識を根底から覆す、パンチのある広告で名を馳せるクリエイティブエージェンシー「ケッセルスクラーマー」(以下KK)が、今年創立25周年を迎えた。オランダが世界に誇る彼らの足跡は各メディアでも大きく取り上げられ、人々の関心を集めている。
創設者のひとりエリック・ケッセルスは、オランダで最も影響力のあるクリエーターのひとり。蚤の市などで購入した写真を独自の文脈で再構築した、ユニークな写真作品で知られるアーティストでもある。「一般的に、広告とは人をうんざりさせるクソである。ウソと欺瞞にまみれ、ステレオタイプな慣習にがんじがらめ。その中で、決して既存のスタイルをなぞることなく、妥協のない革新性でカルチャーシフトを起こす広告を作り続けることがモットー」と、自社の理念を語る。
最近では、環境問題に敏感なミレニアル世代がターゲットの、アートとチャリティーを融合したプラットフォーム「ダブルダッチ」のキャンペーンが話題になったが、KKはこれまでにもオランダ広告史上に残る傑作を多産してきた。
例えば、殺到する利用者からの苦情を減らすために、その汚さや狭さを逆に「ウリ」としてアピールしたバジェットホテル「ハンス・ブリンカー」の広告。あるいは、オランダのbe動詞第一人称であると同時に一般的な男性の名前でもある「Ben」と名付けた携帯電話会社や、各国の都市が手本にしたアムステルダム市の観光誘致キャンペーンなど、人々の記憶に深く残るヒット作は数え切れない。
「僕の知る限り、KKはオランダ初のクリエーター主宰のエージェンシー。日和見主義な広告業界の中で異端児と言われ続けながらも、創造に対するストイックさを貫き通してここまできた。KKは、このDNAを次世代に継承していく“スクール”として発展させていきたいし、そんなあり方を確立できたことを誇りに思っている」
そう語る鬼才ケッセルスが率いるKKの流儀は、ますます多様化する広告の未来にどんな新天地を切り拓いて行くか。これからの活躍にも注目したい。