台湾のGogoroによる「Gogoro Energy and Transportation Platform」。スマートスクーターのプロダクトデザインから運用の仕組み、そして開発の理念まで、トータルなデザインが高評価を得ました。
HAGISO代表の宮崎晃吉さんが「全国で真似してほしい」というホテル「hanare」の仕組みは、既存の町の要素を生かし、町の日常とゲストを結ぶデザインが注目されました。
東京を印象づけるデザインが評価された、東日本旅客鉄道と東京都による「駅前広場と道路空間からなる景観[丸の内駅前広場から行幸通りに繋がる景観]」。
ファイナリスト6件のうち、特に注目されたモビリティ、建築や取り組みのカテゴリーから選ばれた3件には、今年のグッドデザイン賞が目指していたものが凝縮しています。まず「おてらおやつクラブ」とともに大賞の決選投票に進んだ「Gogoro Energy Network」は、アジア圏で深刻な問題である大気汚染を低減するために、市民のモビリティの主役である二輪車に注目。電動スクーターのデザインだけでなく、エネルギー管理、ビッグデータ、そして盗難防止システムなど社会インフラとなるスマートプラットフォームに対するトータルなデザインが高評価を得ました。東京・谷中のホテル「hanare」は、下町の古い民家や銭湯、市民のお稽古教室、お寺を、それぞれホテルのレセプション、宿泊施設、大浴場、文化体験と解釈し、町全体を大きなホテルに見立てた宿泊施設です。既存の施設を利用しながら、ゲストに日常の町の姿を感じてもらうようなコミュニケーションを創出するデザインは、地域社会の共通知となりうる「マチヤド」のお手本として注目されました。東京駅の「駅前広場と道路空間からなる景観」も、皇居と東京駅を結ぶ日本を代表する公共空間にふさわしい格調高いデザインが評価されました。都市空間にあるさまざまな要素や制約を格調高いデザインへと高めていったプロセスにも注目が集まりました。
ソニーのエンタテインメントロボット「aibo」。19年前の大賞受賞後も継続して製品開発を続けてきた企業の姿勢も共感を呼びました。
近年注目される在宅介護の負担軽減に応えるプロダクトとして開発された、富士フイルムの「ポータブルX線撮影装置 FUJIFILM CALNEO Xair」。
2件のプロダクトにも、新しいコミュニケーションのあり方や社会課題の解決というストーリーが込められています。愛らしい子犬の姿のデザインとともに、AIやクラウドなど最新技術を搭載して登場したソニーの「aibo」は、ロボットと人との関係に新たな地平を開き、医療や僻地での現場など、癒しを求める人々へのコミュニケーションツールとして可能性を広げた点が高い評価を得ました。富士フイルムのポータブルX線撮影装置「FUJIFILM CALNEO Xair」は、在宅医療でも医療従事者がひとりでX線を撮影し、その場で画像を確認できる画期的な機器として開発。患者と医療従事者双方に負担の少ない状況を生み出した点が注目されました。
大賞に象徴されるように、今年のグッドデザイン賞は「取り組み」が注目されたように思います。障害や貧困など社会の中で弱い立場にあったり、見過ごされてしまいがちな小さな問題に、デザインが加わることで解決に向けた人の関係が生まれ、認知や関心を大きく広げることができる。そんなデザインの慎ましい可能性と「美しさ」を評価しようという機運が積極的に働いていたように思います。
10月31日から東京・六本木の東京ミッドタウンの各所で、「GOOD DESIGN EXHIBITION 2018」が開催されています。グラフィックデザインは審査委員でUMAの原田祐馬。
ベスト100から今年注目されたアジア各国の受賞デザインまで要注目のデザインが並ぶ会場。受賞者によるトークイベントなども必聴です。
金賞や、新たなビジネスモデルや新産業の創出とイノベーションの促進という観点から選ばれたグッドフォーカス賞、19件のロングライフデザイン賞にも注目しましょう。11月4日まで開催中の「GOOD DESIGN EXHIBITION 2018」では1353点すべての受賞作品に出合えるだけでなく、受賞者や審査委員によるプレゼンテーションやトークセッションにも参加できます。誰もが社会をちょっと良くしたり美しくしたり、心地よくするデザインに参加できる可能性に満ちていることを、2018年のグッドデザイン賞から感じることができるに違いありません。