オトナが夢中にさせられる、東京都現代美術館の『あそびのじかん』。

オトナが夢中にさせられる、東京都現代美術館の『あそびのじかん』。

文:はろるど

開発好明『受験の壁』2016年再制作 熾烈な受験戦争で受験生が感じるプレッシャーをボルダリング壁に表現した作品。受験生の背負う「家」を象徴する存在として、タンスを使っています。※写真はイメージ 写真:開発好明

忙しい日々に追われ、「遊ぶ」機会をなかなか得られない現代の大人たち。

東京都現代美術館で開催中の『あそびのじかん』では、子どもだけでなくそうした大人もターゲットに、6組のアーティストが遊び心や好奇心を喚する参加型のインスタレーションを仕掛けます。

展示室の行く手に立ちはだかる、巨大な壁。開発好明はタンスを高さ8メートルまで積み上げたクライミングウォールを設置。1段目のタンスには実際に手足をかけて登ることも可能です。ここで軽く汗ばんだ後は、野村和弘の『笑う祭壇』にチャレンジ。小さな台座に乗るようにボタンを投げ入れるゲームのような作品ですが、思いのほか難しく、なんとか成功させようと躍起にさせられます。揺れ動く三原色の映像に身体のシルエットを重ねられる「ハンバーグ隊」のインスタレーションは、いつしかリズムに乗って踊りだしてしまいます。こうして一連の展示を追っていくと、夢中になって遊ぶ感覚が蘇ってくるのです。

ラストの『みんなとアイディアを共有しよう』のコーナーでは、好きな遊びを記入した用紙を壁に掛け、さまざまな遊びのヒントを来場者同士で共有することができます。遊びとは非生産的なものではなく、新しいアイデアを交わしたり発見したりるするきっかけになるもの。そこから、独自の価値が創造される、ひとつのアートと呼べるものが生まれるのではないでしょうか。

野村和弘『笑う祭壇』「春を待ちながら―やがて色づく風景をもとめて―」展 展示風景 2015年 十和田市美術館(写真:小山田邦哉) ボタンを台座に乗せれば見事に成功ですが、失敗して落ちたボタンが散らばる光景はまるで抽象画。会場ではひとりにつき小皿2杯分までのボタンを投げられます。

タノタイガ『タノニマス』 2007年(2019年再制作) 作家自身の顔を象ったお面が壁いっぱいに並んでいます。来場者がワークショップでお面に思い思いのデコレーションをすることで、同じ型のお面から千差万別の表情が生み出されます(ワークショップは定員制、事前に整理券が必要)。photo:Harold

13人のメンバーで構成され、SNS上のグループチャットを遊び場に活動する「ハンバーグ隊」の映像インスタレーション。プロジェクターは市販の乗馬フィットネス機器の上に乗せられていて、ランダムに可動しながら映像も同時に動きます。 photo:Harold

『あそびのじかん』

開催期間:2019年07月20日(土)〜10月20日(日)
開催場所:東京都現代美術館
東京都江東区三好4-1-1
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(7月26日から8月30日までの金曜は21時まで)※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月(8月30日、9月16日、9月23日、10月14日は開館し、翌日休館)
入場料:一般¥1,200(税込)
www.mot-art-museum.jp

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