家でも観られる、グッチが韓国でスタートさせたアートプロジェクト
韓国・ソウルにて、グッチの主導するオンラインビューイングも可能なアートプロジェクト「No Space, Just A Place」が2020年7月12日まで開催されている。本展のべニューが本国イタリアではなく、どうして韓国なのか。その理由は、ふさわしい土壌が韓国にはあるからだと考えられる。
とりわけソウルでは1990年代後半以降、ビデオアートの先駆者であるナム・ジュン・パイクが築いた礎のもと、新進のアーティストたちがホワイトキューブではなくロフトや倉庫といったインディペンデントなスペースで、政治的かつ実験的なプロジェクトを行っていた。その熱はいまだ冷めず、近年ではアートだけでなく、音楽、ファッションといった分野にも波及。各々がつながり合い、異質性、少数派アイデンティティ、あるいはクイアといったことについて言及し表現する若者たちが増えている。
アレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任した2015年以降、グッチはトランスジェンダーであることを公言している女優のハリ・ネフをフレグランス「グッチ ブルーム」のミューズに迎え、エルトン・ジョンのステージ衣装を手がけるなどしてきた。さらには19年より、ジェンダーの平等を訴えるパワフルなZINE『CHIME』を発行している。言わずもがな、今回のプロジェクトもアレッサンドロのディレクションによるものだ。
アレッサンドロが掲げているテーマは、ジャンルとジェンダーといった区分けされているものの横断や橋架け、自由な自己表現である。韓国ではそういったことが自然発生的に起こり続け、そこが彼のテーマに合致しているためにべニューとして選ばれたと言って間違いはないだろう。
「No Space, Just A Place」では、韓国にあるいくつかのインディペンデントなアートスペースをフィーチャーしている。韓屋(ハノク、伝統的な朝鮮の建築様式でつくられた家屋)をそのまま活かしたギャラリー「Audio Visual Pavilion」。クイアをテーマにしたエキシビションを数々展開してきた現代アートギャラリー「Hapjungjigu」。インタラクティブ/サウンドアートを中心に、インスタレーションやパフォーマンスを通して紹介している「Post Territory Ujeongguk」……。これらを含む10のスペースが今回は選ばれ、大林美術館内にエリアをもち、それぞれの展示を行っている。
実際の空間に浸るには現地に赴く必要があるが、オンラインビューイングですべてを観ることも可能。7月12日の期日までにいまの事態が収まることを祈りつつ、まずはこのユニークな試みを家で堪能しよう。
※オンラインビューイングは下記の公式サイトのトップ画面からどうぞ。
『NO SPACE, JUST A PLACE』
開催期間:開催中~2020年7月12日(日)
開催場所:韓国・大林美術館、Audio Visual Pavilion、Boan 1942、D/P、Hapjungjigu、OF、Post Territory Ujeongguk、Space illi、Space One、Tastehouse、White Noise
https://nospacejustaplace.gucci.com