生命の可能性や危機を表現するバイオアートの魅力を、ITジャーナリスト林...

生命の可能性や危機を表現するバイオアートの魅力を、ITジャーナリスト林信行が語る。

談:林 信行 構成:高野智宏

GYRE GALLERYで開かれる2度目のバイオアート展覧会。監修の飯田高誉氏曰く今後もシリーズとして続けていくことを検討しているようだ。

2020年に世界を襲い我々の生活を一変させたCOVID-19のパンデミックは、われわれ人間も自然の脅威には抗えない、大自然の一部に過ぎないということを改めて実感させてくれた。そんな状況だからこそ観覧者に強く訴え、問いかけてくる展覧会がある。現在、表参道のGYRE GALLERYで開催されているバイオアート展『ヒストポリス:絶滅と再生』だ。

展覧会の内容を語る前に、バイオアートについて触れておきたい。そもそもバイオアートとはなにか。ここでいうバイオとは生命のことだ。展覧会のゲストキュレーター、高橋洋介氏はバイトアートを「『生きた素材』を使って芸術を表現したり、生命をテーマに芸術を表現すること」と定義している。

バイオアートは、“炭鉱のカナリア”のようなもの

先日、無事開催を迎えた横浜トリエンナーレに行ってきたが、副委員長を務める横浜美術館館長の蔵屋美香さんも、挨拶で「アートは時代の最先端の話題を取り上げ、その素材を実験的に扱うことこそ、アーティストの役割だ」と言っていた。

“炭鉱のカナリア”という言葉があるが、見えないモノをテーマとして扱いアート作品とすることで、警鐘を鳴らす役割をもっているのが、バイオアートという分野ではないかと思っているのだ。

ちなみに「メディアはメッセージ」という言葉で有名な、カナダ人の文明批評家、マーシャル・マクルーハンも「芸術は最高の危機発見装置」と同様のことを言っている。

確かに、遺伝子操作などの言葉はしばしばニュースで耳にするものの、一般的には実感を抱きづらいかもしれない。しかしその認識は、危ういと言わざるを得ない。遺伝子組み換えされた食材や、それら食材を使用した食品は、もはや普通にスーパーで販売されているし、知らず知らずその食材や食品を購入していることもありうるのだ。

もちろん、遺伝子組み換えされた商品が身体に害を与えるかといえばそうともいえない。しかし、そうした遺伝子操作が孕む危険性を、興味深いアート作品として可視化することが、バイオアーティストの役割でもあると思うのだ。

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