会期は残りわずか! 尾形光琳の国宝『燕子花図』と鈴木其一の『夏秋渓流図』で、初夏を楽しみましょう。
東京・根津美術館で恒例の展覧会、同美術館が誇る国宝、尾形光琳の『燕子花図屏風』が展示中です。今年は、昨年サントリー美術館で大きな個展が開催され、近年評価が高まっている鈴木其一の『夏秋渓流図屏風』とのダブル展示とあって話題です。琳派の傑作が時を超えてそろい踏み、というわけです。
京都の高級呉服商で豊かな文化環境に育ち、江戸初期の文化人、本阿弥光悦と俵屋宗達に私淑し、彼らの雅をより装飾的に洗練させて、後の「琳派」の名称の元になった尾形光琳。そのモダンなデザイン性は多くのクリエイターを魅了し、絵画にとどまらず、工芸の諸分野にわたって、現代にまで継承されています。
その光琳に惚れ込んで、彼の業績をまとめつつ、自らの画風に採り込んで「江戸琳派」を創始した酒井抱一の一番弟子だった鈴木其一。早くからその画力を認められ、抱一を継承しつつも、彼の死後は、直接宗達や光琳を研究し、やがて独自の世界を創り上げました。各々がおよそ100年を隔てながらその世界を受け継ぎ、新たな表現へと昇華させた、ふたりの琳派の画師。彼らの特徴が最も表れているといえる傑作で、その共通点と相違点を堪能できます。ほかにも宗達の工房作である華やかな『四季草花図屏風』や光琳の大胆な構図がひときわ感じられる『夏草図屏風』、『白楽天図屏風』などの琳派作品、そして其一の生きた江戸後期から、大正期までの江戸=東京で制作された日本画も紹介されます。また、根津美術館のもうひとつのお楽しみは、同時開催されるコレクションのミニ企画たち。季節に合わせた展示は、「行楽を楽しむ器―提重と重箱―」と「新緑のころ―初夏の茶の湯―」。金銀の蒔絵を施したみごとな携帯用の器の数々は、その収納の工夫も含め、ため息ものの美しさです。ゴージャスな提重や重箱をお供に出かける行楽の夢にひたれるかも。初夏を演出する茶道具の数々は、ちょっとずんぐりしたたたずまいが愛おしい『青磁筍花入』を筆頭に、すがすがしい空気をもたらします。
一級品によるきらびやかさとさわやかさの競演、この季節ならではの空間では、夜間開館も実施中です。庭園では本物のカキツバタも満開の季節、陽に輝く庭の花とともに、黄昏のあわいに黄金色の作品とともに、お好みでお過ごしください!
特別展 「燕子花図と夏秋渓流図」
開催期間:~5月14日(日)
開催場所:根津美術館
東京都港区南青山6-5-1
開館時間:10時~19時(入館は閉館30分前まで)
TEL:03-3400-2536
入場料:一般¥1300
www.nezu-muse.or.jp/