スター作家でたどるベルギーの不思議な個性とは? 「ベルギー奇想の系譜」。
現在のベルギーとその周辺、かつてフランドルと呼ばれた地域には、ほかのヨーロッパ諸国にはない、独特の表現世界が脈々と受け継がれています。見事な写実と幻想の融合――まさに“奇想”というにふさわしいそれらは、美術史の中でも常に独自性を放ってきました。このベルギーの不思議な表現世界の系譜をたどる展覧会が、渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されています。
始まりは15、16世紀のルネサンス時代から。ボス派やブリューゲルに代表されるフランドル絵画は、先の東京都美術館で開催された展覧会で記憶されている方も多いかと思います。その後は自然科学や近代啓蒙思想がヨーロッパを席巻し、現実や事実が重視されますが、その時も彼らの想像力は意識の底に流れていたのでしょう、19世紀末には、反動のように心の内面や闇の世界を表すベルギー象徴主義が台頭します。そして20世紀シュルレアリスムに継がれ、現代につながっているのです。
この500年にわたるベルギー美術をたどる会場は、時代ごとの3章に分かれ、30名の作家の作品が「奇想」ぶりを競います。
15~17世紀のフランドル美術では、ボスからブリューゲルへ、そして奇想画家ではありませんが、激しい感情や宗教的主題にふさわしい表現としてその迫真の写実に“異形”を描いた巨匠ルーベンスに系譜をたどります。
19世紀末から20世紀初頭では、フランスにも影響を与えたベルギー象徴派と表現主義の作家たちがラインアップ。ロップスには北方美術が好んだ骸骨の近代的エロティシズムでの復活を、クノップフにはパステル画や写真作品の謎めいた魅惑を、さらにアンソールやスピリアールトの作品にほかに類を見ないその独自性を観ます。
シュルレアリスムから現代では、夢の中のような夜の情景を描いたデルヴォーや、描かれるものは現実的なのに組み合わせが奇妙なマグリット、ヤン・ファーブルを筆頭とする現在活躍するアーティストの作品まで、彼らに流れる「奇想」の水脈の豊かさと強さを実感します。
絵画、版画、写真、彫刻、インスタレーションなど、多様な表現に見られるなんとも“へんてこ”な世界……。
そこには不気味さや怖さとともに、皮肉とユーモアが共存しています。写実と幻想、美と醜、生と死、あらゆるアンヴィヴァレントをつなぐ茶目っ気が、その魅力なのかもしれません。
古今のスター作家の作品から感じられるベルギーの個性に、あなたは何を見出すでしょうか?
「ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」
開催期間:~9月24日(日)
開催場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
東京都渋⾕区道⽞坂2-24-1
開館時間:10時〜18時(⾦・⼟曜⽇は21時まで) ※最終⼊場は閉館の30分前まで
休館日:8月22日(火)
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
⼊館料:⼀般1,500円ほか
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_belgium/