サントリー美術館のリニューアル記念展で愛でる、「ハレ」の場を彩る名品たち。
昨年冬からの設備改修工事を終え、2020年7月にリニューアルオープンしたサントリー美術館。2007年に赤坂から六本木へ移転して以来初の改修で、外観や館内の動線に変化はないものの、エントランスには「水」をイメージしたガラスのカウンターを導入。さらに照明も自然光のような波長を含むLEDに一新されるなど、進化を遂げている。
そのリニューアル記念展の第一弾となるのが、『ART in LIFE, LIFE and BEAUTY』だ。ハレ(非日常)の場にふさわしい着物や装飾品、酒宴の調度品、南蛮趣味の工芸など、古来から暮らしを彩ってきた品々を展示。あわせて現代美術家の山口晃や野口哲哉、それに漆芸アート集団「彦十蒔絵(ひこじゅうまきえ)」の若宮隆志などによる、古美術をリスペクトした作品も公開されてている。過去と現代がクロスする意外な邂逅も見どころだ。
江戸時代の絵画の世界を立体的に再現した取り組みも興味深い。上野の花見と歌舞伎をモチーフとした伝菱川師宣の『上野花見歌舞伎図屛風』(江戸時代)には大勢の宴会を楽しむ人々が描かれているが、その光景を同時代の工芸品にて再現して、雅やかな雰囲気を演出している。衣桁に多くの衣装を掛けた様子を描いた『誰が袖図屛風』(江戸時代)も、同じく当時の道具で空間を再構成し、屏風と見比べることができる。使用されている展示品もハレにちなみ、国宝の『浮線綾螺鈿蒔絵手箱』(鎌倉時代)や京焼の名品『色絵梅枝垂桜文徳利』(江戸時代)など、華美で高貴な作品が多いのも特徴だ。会場がまぶしく映る。
1961年に開館したサントリー美術館は「生活の中の美(ART in LIFE)」を基本理念に掲げ、数多くの展示や収集活動を行ってきた。生活に使われる道具や調度に「美」を見出す人々の意識は、いまも昔も変わっていない。奇しくもコロナ禍において、宴会や祭りが立て続けに自粛されるなか、サントリー美術館へ並んだ麗しい優品を愛でていると、久々に心晴れやかな気分にさせられてうれしくなる。
「リニューアル・オープン記念展 ⅠART in LIFE, LIFE and BEAUTY」
開催期間:2020年7月22日(水)~9月13日(日) ※会期中展示替えあり
開催場所:サントリー美術館
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
TEL:03-3479-8600
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(9月8日は開館)
入場料:一般¥1,500円(税込)
※マスク着用や入館前の検温、手指消毒液を設置するなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施。