光と身体、写真家とダンサー、その濃密なコラボレーション

『田原桂一「 光合成」 with 田中泯』

原美術館

光と身体、写真家とダンサー、その濃密なコラボレーション

赤坂英人 美術評論家

『Bordeaux-11』1980年。1978年から80年にかけて行われたフォトセッションは、写真集『Photosynthesis 1978-1980』となった。展覧会期間中、田中はふたりのコラボレーションの締めくくりとして、ダンス・パフォーマンスを行う予定だ。© Keiichi Tahara

『New York-1』1978年。© Keiichi Tahara

『Island-11』1980年。© Keiichi Tahara

「光の彫刻家」と言われ、生涯にわたって光の探求を続けた写真家の田原桂一と、独自の存在感を放つダンサーで俳優でもある田中泯によるコラボレーション展「光合成」が開催されている。 

この展覧会は今年6月に亡くなった田原と、身体表現に懸ける田中による「光と身体」をテーマとした記念碑的フォトセッションの記録だ。 

田原は1951年京都府生まれ。72年に渡仏。77年にパリのアパルトマンの屋根裏の窓から見える陰影に富んだ光景をモノクロで撮った「窓」シリーズで、アルル国際写真フェスティバル新人大賞を受賞。世界的なデビューを飾った田原は、その後パリを拠点に光の表現の可能性を探し求めた。近年は彫刻や環境造形も手がけた。 

一方、田中は1945年東京生まれ。クラシックバレエとモダンダンスを学び、74年から独自の身体表現を追求。山村に移り住み、農業を基礎とした舞踊活動を展開。映画『たそがれ清兵衛』をはじめ俳優としても注目を集める。 

こうしたふたりが出会ったのは78年の秋、パリでのことだった。以来、ふたりは「光と身体の関係性」を探求した。ヨーロッパ、アメリカ、日本とさまざまな都市や環境の中で、田中はその時その場所の空気感に身体を反応させ、田原はその光と田中の身体の輪郭を捉えようとした。 

展示されているのは78年から80年に撮影された41点と、2016年に撮影された5点の計46点。すべてモノクロームである。 

その場その場で、まったく異なる身体の表情を見せる田中。田原は光と身体が出合うその瞬間を捉える。このフォトセッションは絶妙のコンビネーションだ。そこには田原の主題である透明な光と、田中の主題である身体が混じり合い、動き続ける不思議な物質のような写真が、迫力ある陰影のコントラストを見せている。

『田原桂一「 光合成」 with 田中泯』

開催期間:2017年9月9日(土)~12月24日(日) 
原美術館
TEL:03-3445-0651 
開催時間:11時~17時(祝日を除く水曜は20時まで) 
※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(9/18、10/9は開館)、9/19、10/10 
入館料:¥1,100(税込) 
www.haramuseum.or.jp

光と身体、写真家とダンサー、その濃密なコラボレーション
光と身体、写真家とダンサー、その濃密なコラボレーション