老舗のもてなしを感じる建築、とらや赤坂店

  • 文:海老原光宏
  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)
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3階の菓寮(カフェ)。弧を描くヒノキの天井がダイナミック。一方で、木材の茶色を基調とした内装が落ち着く。手前の丸テーブルは旧店舗でも使用されていた。

ラッシュに沸く東京の建築シーン。デザインとコンセプトで群を抜く、世界に誇りたい注目株を、Penが厳選した。今回紹介するのは、「とらや赤坂店」だ。

1964年、新築竣工した本社ビル地下1階〜1階にとらや赤坂店が開店。建て替えのため2015年から休業していたが、昨年10月にリニューアルオープンした。設計はとらや京都店や東京ミッドタウン店などを手がけた建築家、内藤廣。初期プランでは10階建てビルを予定し実施設計まで進んでいたが、時代性を重視したいという黒川光博社長の一声で、親しみやすい木を基調とした低層建築に方針転換した。

DMA-2_CR10033.jpg2階の売場。奥のカウンターバックは黒漆喰の磨き仕上げが美しい。旧赤坂店にあったロゴ「鐶虎」にプラチナ箔加工を施して設置。建築素材はヒノキやナラ材などを使用している。

DMA-3_CR10103.jpg各階をつなぐ周り階段。上に設置された天窓より自然光が注ぐ。

旧店舗は厳かな雰囲気で内部が見えづらかったが、新店では全面ガラス張りにして印象を一新。店内は奈良県吉野のヒノキを使用し、温かく落ち着いた空間に。フロア構成は地下1階がギャラリー、1階がエントランス、2階が売場、3階が菓寮(喫茶)という4層。1階エントランスから菓寮まで伸びる階段は、全面ガラス張りのファサードに沿い、窓の外を見ながらの上り下りも楽しい。また部分的に旧店舗で使用していたものを再利用し、歴史を引き継いでいる。

訪れた際には耳を澄ませてほしい。青山通りの喧騒が聞こえなくなる。これは各所に施された吸音材によるもの。その静寂から、創業500年の老舗のもてなしを感じとれる。

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曲線とヒノキでつくる、穏やかなもてなしの空間

DMA-5_CR10119.jpg地下1階ギャラリーは、和菓子や日本文化にちなんだ展示が開催される。菓寮の待ち時間などの際も客が楽しめるように配慮して設けられた。

DMA-6_CR10132.jpgギャラリーの壁面は、羊羹をかたどったヒノキの木材を2万ピースも格子状に組み、張っている。

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区画に合わせた扇型の建築。ガラス張りのファサードは開放感を強調している。

とらや赤坂店

設計:内藤廣 2018年
住所:東京都港区赤坂4-9-22
TEL:03-3408-4121 
www.toraya-group.co.jp

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※Pen2019年11/1号「TOKYO 建築案内」特集よりPen編集部が再編集した記事です。